another story

□〜プラネタリウム〜
43ページ/89ページ

 結子が僕に見せた笑顔は、完全に”久しぶりに会った友達”に向けられたもので、彼女に恋心を抱いていた僕とはテンションがまるで違った。元カノだけに感じた”差”は大きかった。心のどこかで元カノだから復縁できるのではないかという大きな誤算があったのだ。バカだよな。
 そういえば、高校を卒業して疎遠になっていった結子との関係、ふられるのが嫌だったから僕の方から別れ話を切り出したんだっけ。つくづく情けない。
「あ〜あ。」
 僕は大きなタメ息を声にしてベッドに横たわる。
 結子との偶然の再会は、やはり最悪なものだったが、さほど後味が悪いものでもなかった。自分の甘さ加減に腹が立つし、正直淋しいが、これで別の新しい一歩を踏み出せると思うと気持ちがスッとなる。変わらなくちゃ。
 シーツの上に置いていた携帯がメール着信を告げる。悟志からだ。
「お疲れ。さっきは本当に驚いた。なんか気まずくなって、慎太郎を避けるようなことをしてしまった。ごめん。ところで来週、空いてる日ある?慎太郎の歓迎会やらんとな。この前、行けんかったし。俺が全部おごるよ。」
 僕は一通り読んで、返信画面に切り替えて指を止めた。言葉が浮かんでこない。会ったところで、悟志に対して、どう接していいか分からないのだ。やはり嫉妬なのだろうか。結子の件でムカつく気持ちはお門違い。許すも許さないもない…そんな権利など無い。そもそも、僕に気を使う必要など無いのだ。ミジメな気分だ。だが、悟志は本当に良い奴だ。次々と湧いて出てくる感情が行き場を失ってぶつかり合っている。そして、一つだけ残った。やっぱり今は会いたくない。ワガママで子供っぽいと自分でも思うが、一番素直な感情だった。僕は天井が透けて見えるほど、ただ見つめていた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ