another story

□〜プラネタリウム〜
42ページ/89ページ

「質問が多過ぎだよ。まあ東京の生活はそれなりに楽しかったよ。」
「そっかぁ。私もあの時、東京に強引に付いて行けばよかったな。」
 突然の結子の言葉に僕はドキッとして、その表情を見た。そこには憂いのない笑顔があった。それは遠くて、優しくて、すごくすごく遠くて、いくら手を伸ばしても届かない感じがした。悔し過ぎて僕は笑った。告白もしていないのにフラれたみたいだ。
「やっぱあの時、強引に東京に連れて行けばよかったな。」
 そう答えて僕らは笑い合った。最後に笑い合えた。伝わらなくてもいい、僕にとってケジメの告白だった。正直、今すぐに結子に対する感情を捨てることは出来ないが、あきらめる決心がついたし、心の奥に潜んでいたヌメヌメした小さなカタマリは消えてなくなった。
 手にしていた携帯電話が鳴る。母親からだ。突然いなくなった僕を待っているのだろう。
「近いうちに相沢や香奈も誘って、みんなでご飯でも食べに行こうよ!悟志によろしく言っておいて。」
 僕は結子にそう言い残して母親のもとに戻った。

「どこに行っとったの?早く荷物持って。」
「ごめん。偶然、懐かしい友達に出会ってさ。」
 僕は急いで母親が両手に持ったビニール袋を受け取り家路に着いた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ