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□〜プラネタリウム〜
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 カートにカゴを乗せて母親の後を歩く。懐かしい感じだ。小学生以来かもしれないな。中学生の頃は、こうして母親と買い物をするのが何故だか恥ずかしかった。反抗期というやつだろう。高校生になると、そうした感情は無くなったが、母親が再び僕を買い物に誘うことはなかったのだ。その後、僕は進学のため上京した。本当に久しぶりだ。
「慎太郎。夕飯は何にしようか?」
「何でも良いんじゃないの。」
 何気ない会話。あの頃と変わらない会話が、僕の心をあったかくしてくれる。この町に帰って来て良かった。
 突然、マナーモードにしていた携帯電話の振動が、僕の体にまとわりつく。何となく嫌な予感がする。画面の文字を見ると相沢だった。
「もしもし。」
「おお!慎太郎か!昨日、大丈夫だったか?無事に帰れたか?」
 相沢のハイテンションな声に体の力が抜ける。
「大丈夫だって。何かあったのかと思ったよ。今、母親と買い物してるから、急ぎの用がなかったら切るぞ。」
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