another story
□〜プラネタリウム〜
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「私も東京に行こうかな・・・。」
浅い眠りのなかで懐かしい声がこだましている。そして真っ暗な世界は次第に色を取り戻して行く。
太陽の光を微かに残した空は深い青に染まっていて、そこには透き通るような白い月が浮かんでいる。僕はそんな風景を眺めながら例のコンビニへ向かって歩く。一歩踏み出す度に一つずつ記憶がよみがえっていくような感覚だ。僕は結子と待ち合わせをしている。今日は花火大会だったんだ。僕は時計を見ながら少し歩く速度を速めた。
コンビニへ着くとすぐに結子がやって来た。
「ごめんね。お母さんに着付けしてもらってたら遅くなっちゃった。どうかな?地味過ぎたかな?」
見慣れない浴衣姿にドキドキした。淡いピンクの花柄がデザインされた紺色の浴衣が大人っぽく感じさせる。正直、見とれてしまっていて結子の問いに答えることが出来ない。一見おとなしそうな印象の彼女だが実はかなり気が強いので、こうした沈黙がきっかけでケンカになることもある。さすがに今日は避けたい。
普段は褒め言葉もすらすらと出てくるのだが肝心なところで言葉に詰まる。3年近く告白出来なかったのも頷ける。
「最高にマジでカワイイです。」