作品置き場。

□魂の制限時間。
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魂の制限時間。

俺は余命3ヶ月らしい。
「すでに癌が色々な所に転移していますね。」
なかなかにアバウトな医者の説明によると俺はもう助からないとか。
というか素人の俺には詳しいことはよくわからない。
「こちらではもう手の尽くしようがないですね。」
いつ撮ったのかもわからない、俺の肺の写真を見せながら医者は説明を続ける。
「こちらとしては延命治療ぐらいしかできませんね・・・・・・。」
よくドラマとかで見る展開か。
俺はそのことを人ごとのように聞いていた。
「別に尊厳死でもいいですけど。」
すすめるなよ。
ものすごくぼんやりとひとごとのように聞いている俺にびっくりしたのか。
医者は聞いてきた。
「あなた・・・・・・死ぬのが怖くないのですか。」
「まあねえ・・・・・・。」
「珍しいかたですね。普通、余命三ヶ月と宣告されたら、真っ青になったり、絶句したり、泣き出す方とかいらっしゃいますよ。」
まあ、普通はそうかもしれない。
ここで大体ドラマとかは。
“一生懸命余命を生きた主人公とその家族”
みたいな感動話を始めるのだろう。
けど、俺の場合にはそんなことはない。
そんな悲劇の主人公を演じる気にはなれない。
だって、俺は。
一ヶ月前にもう死んでいるのだから。
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