作品置き場。

□日替わり少女と名無し少年。〜リターンズ〜
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日替わり少女と名無し少年。〜リターンズ〜

日替わり少女……名前を日替わりで変える少女。少年が8歳のとき政府によって付けられたパートナー。
その前から“人狩り”をやっていたらしい。
それ以外の情報は一切不明。
銃の腕は確かなもの。

名無し少年……その名の通り、名無し。
この物語の語り部。一人称“僕”
自嘲的であり、どこか悟ったような話し方をする。
過去はあまりいいものではなかったらしい。
少女の名前を毎日聞くのが日課。

僕らが生きていく中で。
そんなことはどうでもいいんだ。
でもそういうことが一番大切なのかもしれない。
例えば僕にとっての彼女。
彼女にとっての僕。
世界的にはどうでもいい僕ら。
だけど。
僕らにとっては大切なものかもしれない。
ほら、また、そうやって。
失くしてから気付くのかい?
「おっせ――な、アイツ……。」
とある世界。
とあるところ。
とある公園。
といってもそんな大げさなものではない、
ただの町はずれの小さな公園。
“危険だ”という理由で潰された遊具の残骸。
全然すべらなそうな滑り台。
低空中飛行ブランコ。
前まわりもできなさそうな鉄棒。
全て子供の安全を考えて作ったそうだ。
といってもそれは。
大人の言い訳っぽい。
ありえないぐらい、狭くて、すぐ誰からも飽きられてしまいそうだ。
怪我されたら困るだろうから。
必要最低限に。
つまるところ、その少年はそんなつまらない場所で待ちぼうけをくらわされていた。
「おもしろくなさそー。」
こういうの税金の無駄遣いっていうんじゃないだろうか。
今だって午後2時とか言う真昼の遊べる時間のくせに誰もいない。
いや、まあ、今時って小さい頃から塾行ってたり、外は危ないとかいう過保護な親がいるからなあ。
そのせいか?
でも公園ぐらい……。
だから少年が小さな小さなベンチを2つ占領していたって白い目を向ける大人はいない。
少年はそれをいいことにごろりとベンチに寝転がった。
そっと見上げると青い空に白い雲が泳いでいる。
……平和だ。
いつか壊れてしまうとしても。
それを知っていても。
だからこそ今笑うんだ。
そう言っていたのは“彼女”だっけ。
それとも僕だっけ。
まあ、いいかそんなこと。
ちょっとうとうとして目を閉じる。
少年が心地よい眠りに入ろうとしたその時――。
少年の顔に冷たい物が押し付けられた。
少年はヒヤリとしたものに反応して思わずガバッと起き上がる。
まさか……銃!?いや、でも……。そのわりには冷たかったような?
なんか冷蔵庫に入ってた的な?
ってか……何も怪我してないし……?
無事だし?
ふと気が付くと隣に誰かが立っていた。
それと同時に降ってきた声。
「だあ――れーかなあ?こんなところで寝ているのは。風邪引いちゃうよお。」
見上げると両手に缶ジュース(一つ炭酸。)を持ち、
さらにスーパーのナイロン袋を下げ、満面の……太陽のような笑みを浮かべた少女。
彼女だ。
「すずっ……!おまえ、こんな古典的な驚かせ方するなよ!」
「その古典的な驚かせ方でムッチャ驚いたよね――。全然学ばないねえ、なーくんは。」
「うっせ――!!てかなんだよ、なー君って!」
「名無しだからなーくん。よくない?大体、名前無いとやりにくいし。あだ名必要じゃん。」
「だからってこんな変なあだ名……。」
「えっ、んじゃ、なっくんにする?」
ジュースかよ。
ちょっといらっときた僕。
そして何も考えずにいきなり彼女のジュースを取り上げた。
「なっ何?」
彼女が驚いてジュースを死守しようとする。
でも僕はそんな彼女の行動を無視してジュースを勝ち取った。
そのまま振り出す。
「あっそれは……!」
彼女は慌てて僕を止めようとしたけど。
僕は一気に缶ジュースのプルタブを押し上げた。
プシュー。
間抜けな音と共に炭酸が吹きだし、真昼の公園に噴水を作った。
もちろんそれはジュースを持っていた僕に直撃。
「うわっつめて!」
慌てて僕はジュースを腕から離したが時すでに遅し。
僕は水浸しになっていた。
「あーあ。何やってんのよ。」
彼女はあきれたように僕をタオルでふきだしたが、ぷっと吹き出した。
「ほんと何やってんのよ――。これ炭酸だよ!?」
彼女はさっきの僕の行動を思い出したのか、思いっきり笑い始めた。
「あはははははは!ほんとおっかし――。」
「……そんなに笑うなよ。」
僕はむすっとしたけどなおも彼女は笑い続ける。
「だってさ――。いきなりジュース振り出したんだよ!?
シェイクだよ?おかしくない?」
なぜ英語。
「いやだって、それは……。」
「絶対おかしい!」
彼女はそう言ってまだ爆笑している。
しかしやっと不機嫌な僕に気が付いたのか、彼女はもう一本の缶ジュースを僕に差し出した。
「そんな顔しないの。もうジュースもったいなかったでしょ――。」
「……誰のせいだよ。」
「自分のせいでしょ。そろそろ機嫌直さないと一生笑いものにしちゃうよ。」
彼女は脅しにしか聞こえない言葉を言うとジュースを僕に押し付けた。
「ハイッ、これで機嫌直して。」
僕は仕方なく彼女から差し出されたジュースを飲むことにした。
(だっていうこと聞かないと本当に笑いものにされそうだった。)
そのジュースをよく見ると。
“な○ちゃん”だった。
……なんか彼女はこれがしたかったんじゃないだろうかと思った。

その後は昼食をとることになった。
僕はただすずがコンビニから戻るのを待っていただけだった。
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