猫に惚れた猫のはなし

□出会いそして
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「お兄ちゃん元気でね
手紙書いてね
夏休みは絶対会おうね」

東京へ向かう電車の駅のホーム

潔子とぎゅっと抱き合って別れを惜しんだ

俺が前へ進む一歩だと信じて電車に乗る

「じゃあ行ってきます
夏休みにはきっと帰れると思うから」


「気をつけてね」とお母さん
「主張のときはそっちに顔出すからな」とお父さん
祖父母も笑顔で送りだしてくれた


大丈夫
そう言い聞かせて宮城県から東京へと降り立った
東京での俺の住居は遠い親戚が管理するアパートの一室
親戚の人達もそこに住んでいるのでご飯や洗濯などは気にしなくていいらしい

探し求めたアパートに行くまで俺は迷いに迷った

前世を含めれば30なんて年齢の男が道に迷うなんて…

前世は関東に住んでたはずだ
都会っ子でそこそこ遊んでもいたから迷うはずがないのにどうしちゃったんだろうな俺

ふと河原に辿りついた
そこには男の子が二人
ボールはバレーボール

いいなぁなんてずっと見てたら気づかれた

「お前見たことない顔だな」

一人は無言でずっと見てる

「4月からこっちで住むことになったんだけど下宿先?が分からなくて…その迷子…」

言いたくはないが事実だ
俺は恥ずかしさに堪えながら言った

無口だった男の子が「住所…教えて」と聞いてきた
俺は鞄からメモ帳の紙を出した

住所を言うと聞いてきた彼が「近所だから…」と歩き出す

「へぇ珍しいこともあるんだな」

俺が何の事だという顔をしたのを察したのかもう一人の男の子が話を続けた

「俺の名前は黒尾鉄朗
4月から中学生だ
お前と同じだ」

「俺清水鉄也
テツって呼ばれる事が多いかな」

「クロとそこの人早く…」

「あいつは弧爪研磨
一つ下で俺達は幼なじみ」
男の子を追い掛けながら俺と黒尾鉄朗くんとの会話は続いている
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