白黒姫

□遠い空に、浮かぶ月
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「外に出してやろう。」

魔王に2回目に会った時、シェリアはそう言われた。






シェリアとクレアの外見は年月が過ぎてもやはり細部にいたるまで同じであった。
そんな彼女たちは美しい少女に成長した。

きっと人間は彼女たちを見た瞬間に女神と見間違うだろう。

そしてシェリアの心はやはり闇に染まる気配すらなかった。



「外に出してやろう。」



魔王にそう言われたシェリアは、とうとう闇に染める事が諦められて自分は捨てられるのだろう、とそう思った。

しかし、捨てられても行くあてもない。
月の国への行き方も分からない。

この時初めてシェリアは不安というものを心に抱いた。


魔王に腕を引かれて歩く。
痛かったが、久々の他人から与えられる感覚に何故か泣きそうになる。

そして暗闇しかない魔王の城を出て、シェリアは驚愕した。

満天の星空。
美しく優しい光り。
そよ風。
木々の音。
初めて踏みしめる大地。

全てが初めてで、全てがいとおしいと思った。

一際そう思ったのは、明るく輝く月を見てからだった。



「これが外の世界だ。」



魔王にそう言われて、シェリアははっと我に返った。

「私は、捨てられるのですか?」

魔王を見上げてそう問うた。

「…捨てる?まさか!」
「え?」
「お前には暗闇を見せてやる。私からマリーネを奪ったお前に、絶望を!」




ああ、とシェリアは理解した。





私は誰からも愛されてはいない。



初めて見た月は、優しく光り輝いていた。

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