白黒姫
□暗闇の腕中で
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月の一族と闇の一族は相容れない存在だ。
月は闇を切り裂き、闇は光を呑み込む。
正反対の存在。
それで均衡は保たれていた。
しかしある時、闇の王である魔王が光の姫に恋をした。
種族を越えて魅了する。
それほどまでに彼女、マリーネは美しかったのだ。
それからしばらくして、月の姫は姿を消した。
一族は血眼になって彼女を探したが、結局マリーネはみつからなかった。
さらにしばらくすると、新しい月の姫が王位に立ったと知らせがあった。
「わたくしは、ここにいます、」
月の光も届かぬ、月から一番遠い場所。
真っ暗な部屋には1本の蝋燭の炎がゆらめいている。
「…わたくしは、ここに、」
空色の瞳から、光の粒が流れ落ちた。