白黒姫

□六人の使い
1ページ/1ページ




『ああ、おいたわしい…!』

『こんな所にいらっしゃったなんて…!』


その日シェリアは美しい音で目を覚ました。











「あぁ…!なんてお美しい…。マリーネ様によく似ていらっしゃるわ…!」

(マリーネ…?)

シェリアは母親の名前を聞いて完全に意識を覚醒させた。

ぼんやりとした視界がはっきりするにつれて、誰かが自分を覗きこんでいることが分かる。

それも、たくさん。

「!」

あわてて起き上がったシェリアはその自分の行動にさらに驚いた。

(身体が、動く…)

呆然と両手を見ているシェリアに、ふわりと白い布がかけられた。

「…あ、」

柔らかな布。
初めての感触にシェリアの頬が染まる。

「そんな格好ではお風邪を引いてしまいますよ。」

はっと顔を上げれば、にこりと笑いながら柔らかく笑う美しい女性と目があった。

シェリアと同じ、金の髪に碧い瞳だ。

「…あ、あなた、は?」

魔王の城に住む闇の一族たちは皆髪も瞳も着ている服も漆黒だった。
初めて目にする容姿に、シェリアの驚きは隠せない。

「まあ!申し訳ありません、私は月の一族が王家使用人の代表、メアリと申します。」

肩で切り揃えられたさらさらの金髪を揺らし、メアリと名乗った美女は優雅に一礼した。

本当に使用人なのか疑ってしまうほどに優雅である。

いや、それよりも、

「月の、一族…!?」

「はい!私達はあなた様を迎えにここまで参ったのです!」

メアリの後ろでにこにこと笑っていた美女達はこくこくと頷いた。
もちろん彼女達も金髪に碧瞳である。

「マリーネ様が魔王に連れ攫われ早100年…。マリーネ様着きだった私達使用人は血眼になってマリーネ様を探して参りましたが、見つけられず…。魔王がマリーネ様を人質に何かこちらに要求するのかと思いきやそれも違い…。月の国は安定のために別の姫君が王位に就きましたが、私達はあくまでマリーネ様の使用人。今まで捜査を続けて参りました……」

メアリが悲痛な表情で語りだす。

だがしかし、シェリアの顔を見ると柔らかな笑みを浮かべた。

「マリーネ様のお力が感じられなくなった時は涙に明け暮れましたが、しばらくして魔王の城から魔王でも隠しきれない月一族の強い力が感じられたのです。」

なるほど、彼女達はシェリアの存在には気付いていたらしい。
だが魔王の城にはさすがに入ることができず。
この湖も魔法がかかっていて見つけるのに苦労したらしい。

「お迎えが遅くなってしまい、誠に申し訳ありません…。あなたはマリーネ様の忘れ形見も同然。私達が全身全霊をかけてお守りいたします…!」

「…ありがとう。」

メアリの意志に嘘偽りはない。
暖かな気持ちになったシェリアは生まれて初めてふわりと笑った。



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ