* お題他 *
□『誰も知らない恋心』
2ページ/2ページ
まだ薄暗い早朝は、思ったよりも肌寒い。
身体を冷やさないよう何か羽織って来るべきだったか?とも思ったが、どうせすぐに汗を掻くのだ。邪魔になるだけだと思い直し、いつもの場所に足を運ぶ。
そこは自販機を過ぎて少し行ったところのスペースで、伊佐敷や倉持、御幸。それに亮介ぐらいしか使わない…というよりいつの間にか一軍専用自主練場みたいになっていて、あまり人の来ない場所だった。
今日から地獄の合宿が始まるし、こんな日に限って誰かが来てるとは思えない。
そう思ってぶらぶらと辿り着くと、思いがけず小柄な身体が綺麗なスイングを描いていた。
途中買ったポカリを片手にぼけっとしていると、手を止めた亮介がニコリと笑う。
「あれ、純。早いじゃん」
「いやお前こそ…珍しいな」
「まぁね。倉持と約束してたんだけど、アイツ、起きれなかったみたいでさ」
「へぇ〜…」
ったく先輩を待たせるなんて百年早いよね。と文句を言いながらも優しい目をちらりと見せた親友に、伊佐敷は「そーかよ」と緩く笑った。
目の前にいる青道一の技巧派は、共にニ遊間を守る相棒にそれ以上の感情を抱いているらしい。
でも、亮介の事だ。自分の気持ちに自覚があれば、俺に気付かれるようなヘマはしない。
だからきっと無自覚な想いなんだろうと、今日も伊佐敷は見て見ぬ振りを決め込んだ。
デリケートな問題だからとか、俺には関係ない事だからとか。
その判断は間違っていないはずなのに、その度に何故か胸が痛む。
「バット、振りに、来たんで、しょっ」
いつの間にか素振りを再開していた亮介が言う。
「振りながらしゃべんなバカ。舌噛むぞ」
「純じゃ、あるまい、しっ」
「ケッ、そーかよ」
相変わらず素直じゃない相手の横で、バットを握る。
もし同じ事を倉持が言ったとしたら…。いやコイツに限って素直に言う事聞くわきゃねーか。
なんてバカな事を思いながら、無意識に隣の呼吸に合わせて腕を振り抜く自分に気付いて、より一層胸が痛んだ。
俺達は、共に戦うチームメイト。
だからこの痛みの正体は、知らない方がきっと良い。
-オワリ-
やってしまいました!純→亮→倉!いや多分純→亮→←倉!
今回は片想いですが、純亮もいい!とか思ってたりします;
す、すみません(汗)
ご来訪ありがとうございます^^
2009/4/29 ユキ☆
.