* お題他 *

『拍手小話集』
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亮→春→?


* 恋じゃなければいいのに *






練習を終えて、さて引き上げようかと思った時。
ふと春市が遠くを見つめていることに気がついた。

思わずその先を目で追って、…後悔する。
春市のあの顔。眩しいものを見るみたいに紅潮した頬は、アイツを見てる証拠だったね。

ズキ、と胸が痛んで目を逸らす。

あんな風にあんな顔であんな視線であんな幸せそうに、誰かを見る春市なんて見たくない。
見たくないから…心ここに在らずな肩をポンと叩いた。



「春市」

「ひゃっ!…お、脅かさないでよ兄貴!」

「何ぼんやりしてんの?一年は後片付け!…ほら、沢村達が呼んでるよ?」

「あっ…、ごめん、ぼーっとしちゃった。ありがと兄貴!」


真っ赤な顔をもっと赤くして、慌ててボールを拾いに行く背中にほっとする。

ごめんね。本当は兄貴として、お前の恋を応援してあげたいんだけど。
まだちょっと、無理みたい。


邪魔したみたいで後ろめたくて、何となく春市が見ていた方向に顔を向ける。
そこではまだ、アイツが屈託なく笑ってて。

夕焼けに照らされたグラウンドで、俺はバットケースの紐を握り締めた。




ねえ、春市。

この気持ちに相応しい名前なんて、俺はひとつしか思い浮かばないよ。





-オワリ-





“アイツ”はお任せです^^


ご来訪ありがとうございます!

2009/8/14 ユキ☆


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