Bk(K)

□アホのイチカワ
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§01: アホのイチカワ



長谷第一男子高等学校は全学年で約2000人をも越えるというマンモス高である。
偏差値はそこそこだが、私立でありながら自由な校風ということで人気を集めている。


まばゆい新緑の季節、ある男が中庭でフランスパンを咥えながら寝ていた。

彼の名は、イチカワ。

出席番号は6番、テスト成績は下から1番。いわゆる、生粋のアホである。

本来ならば、その悲惨な状態を嘆き、「鬱だ死のう」と呟いて勉強をするはずだが、イチカワは違う。

イチカワは、アホであることを愛した。
いや、正確には、愛しているのである。


「アホだっていいじゃん、人間だもの」と、某詩人のパクリだとも知らずに(アホだから)教員に説き続けてきたのだ。


「…ん〜……」


さて、今イチカワは昼食をとりながら寝ている。しかも、中庭で。

青空の下で、食事をとるのは確かに気持ちのいいことだが――――――




「ごるばちょふッ!」



鳶に襲われるのが難点だ。

見事に彼は、二口食べただけのフランスパンを持っていかれた。鳶の鋭い爪がイチカワの頬を掠めたらしく、奇声をあげてもがいている。

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