短編
□十日
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情事が終わった後、上着を羽織りながら土方が、呟いた。
「万事屋… 」
俺は、銀髪を指でクリクリしながら「 ん?」と聞き返す。
「… その… 」
「んだよ!」
「…だから… その…」
「だからぁ!何!」
「やっぱ、いいわ。」
「何なんだよぉ!テメェはァア!言いたいことがあんなら、ちゃんと言えよ!腹立つなぁ。そんなんだからよぉ!テメェは万年係長なんだよォオ!」
「はぁっ!意味分かんねーし。ってか、係長じゃねー。副長だ」
銀時は頭をぐしゃぐしゃに掻き、大きな溜め息を吐く。
面倒くせぇなぁ… コイツがブチブチ言い出したら… なげぇんだよなぁ…
「ちょっとよ、贈り物をしたいんだけどな。何をやったら喜ぶか… その… 解んなくてよ…」
土方は銀時に背を向けているが、きっと顔は緩んでいるのだろう… 銀時には分かる… だって、それだけ土方を見てきたから…
普段は感情なんて殆ど、表に出さないがふとした瞬間に、見せる笑顔や、本当に嬉しい時には、鋭い眼孔が柔らかな色に変わる事も、銀時は知ってる。
土方は気付いていないだろうが。
「贈り物ねー。」
「… あぁ… 」
銀時は考える。土方の背中を見詰め。
何だよ… 分かりやすい奴…
「誰にヤルかなんて、野暮は聞かねーが… 多串君が考えるもんでいいんじゃねー。」
お前みたいな…男前に好かれる女が羨ましいぜ…
「俺が… 考えるもん?」
「あぁ。何でもいいじゃん!ぜってー、嬉しいって。好きな奴に貰えるもんならよぉ。」
何だっていい… 俺だって…
土方にとってはそうだなぁ… ただの性処理の相手…手っ取り早く…後腐れがない… だから男の俺がいいのだろう…
でも…俺は違う…逢って抱かれて、短い時間でも、土方の温もりを感じたい…
はぁあ〜 なんてな… いい歳こいたオヤジが… 自分で思っときながら… 流石にキモイなぁ…
「す…すすすすす好きな奴ってェエ!」
ほらなぁ… やっぱり
「何、キョドってんだよ。真選組の副長さん!」
「///////きょっ、キョドってなんてねーよォオ… べ… 別にィ!」
「あっそ。」
銀時は蒲団を頭から被り、ギュッと眼を瞑った。
酷い男だ… 今… 聞かなくても… そんな男に惚れた俺が…一番… 馬鹿だけど…
「分かったんならよぉ。サッサと帰れよ。」
そんで… 好きな所に行っちまぇ…
「… 分かった… 」
煙草を吹かし土方は、靴を履き始める。
この瞬間が一番嫌いだ… 此処を一歩出れば… お前は俺の事を忘れる… どんなに躯を繋げても…欲を吐き出せば終わり…
あぁ… でも最初から俺の者じゃ… ないか…
玄関が開く… 銀時は強く眼を瞑り、耳を塞ぐ。土方の遠ざかる靴の音を聞かないために。
バッサッ
へっ!? バッサッて… 銀時を覆う蒲団は大きな手により、剥ぎ取られた。
見上げれば大好きな、漆黒の瞳が優しく銀時を見つめてる。
「十日… 空けとけよ… 俺の思い付くもんでいいんだろぉ。」
それだけ言うと、土方は足早に去る。
十日… って… 好きな奴って… 何でも… 嬉しいって… 土方が考えるもん… って… 十日って…
ェッェエエェエエ!!!
「ちょっ、土方ァア!待って!」
土方の後を追い掛ける銀時。
万事屋の角を曲がるアイツが見えた。
「夜中に、近所迷惑だっろっがぁあ!この天パァア!」
「テメェが一番うっせよ!」
「忘れんなよ。 銀時ィ。」
土方は手を上げ姿を消す。銀時はうずくまり、熱い顔を手で隠す。
「こっぱずかしいなぁ…クッソ… 」
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