短編

□嘘を吐いてまでも君が欲しい
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何時も通りに飲み屋で、かち合い酒を酌み交わす。


散々飲んだ挙げ句に罵り合い、喧嘩が始まる筈… だった…のに…



急に…アイツが…

妙な事を言い出しやがった…


「なぁ… 万事屋ぁ。」

思い詰めた音質。


「んだよ… 」

「お前… 男を… 」

「あぁ? なんだって?」

土方は唇を噛み締める。力一杯、噛み締めているのだろ… 唇の色は変わり血が滲む。


「おいおい… いってぇ… どうしちまったんだぁ副長さんよぉ。」

土方は僅かに微笑むが、その笑みは苦しそうだ。


「土方… もしかして… さっきのマヨネーズが… 当たったのかぁ…だからあれだけ止めろ「違ェェェエエ!!!」あっ、そ…」

銀時はジーッと土方を見る。


土方は俯いたまま口を開く。


「万事屋ぁ… テメェは… 」

言葉に詰まる土方。

「何か悩みでもあんのか? 俺でよかったらよ聞いてやるし。それに、万事屋銀ちゃんだしよぉ。」

銀時はニッカと笑い、土方の肩を叩く。

「… 実はな… 俺…す… す…好きなヤツが… 出来てよー」

「いいじゃん。男前のテメェなら一発OKだろ〜。なんだよぉどこの女だぁ。いいねぇコノヤロォオ!」


「… いや… そうでもねぇ…」

真選組鬼の副長 土方 十四郎は恐ろしくモテる男…


なのに何をそんなに悩み、苦しそうな面をするんだ… はっ!!


「お・・・お前もしか・・・して・・・マヨ星の王女に恋を「殺られてーのかぁテメェはぁあ!!!」

「すんませんιιιι」

大体、可笑しい天敵である俺の前で、弱さを見せるなんて





















可笑しい………



銀時は一口、酒を含む。


「相手は・・・野郎だ・・・」

「ブッ―――――――――――ベッェエエ―・・・ななななっι」

口を拭う銀時。確か…今… コイツ…野郎って言わなかったか?いやいやいやいや?聞き間違え…


「聞き間違えじゃねぇ… 好きな相手は野郎だ。」


ええぇぇええぇぇ――――――!!!!


「マジかぁあ!まじでかぁあ!!!選り取り見取りのテメェが、どーしてぇえ!」

「わからねー。気付いたら… 好きになっちまってた… 気持ち悪りぃよな… 野郎が野郎を… 好きになるなんてよ…」


そうかだから、コイツはあんなに苦しそうな面を、してたのか…


しばしの沈黙の後、銀時が口を開く。


「別にいんじゃねー」


銀時は酒をグイッと飲み干し、土方を見る。銀時の意外な言葉に眼を丸くする土方。


「人を好きになんのによ… 女も野郎もねーよ。それにテメェ程の男が、惚れた野郎だぁ。さぞかしイカした奴なんだろぉ。」

「あ… あぁ… まぁな」

土方も酒をグイッと飲み干す。


「頑張れよ。副長さん!上手く行ったら報告頼むぜ。」

「万事屋ぁ。そこで頼みがあるんだが…」

「ん?依頼か?仕方ねー。万事屋だぁ聞くぜ。相手の調査か?告白の手伝いか?それとも…」

「俺と寝てくれ。」

「なんだ。そんな事か… って!オイ!!ねっ寝るぅぅうう!!!」

ガタッと椅子から立ち上がる銀時。


「あぁ… 報酬は勿論、払う。」

「いやいやいやいや!土方くん、それは可笑しくねぇ…ってか可笑しいよね…好きな相手がいんのに何で?」

「その… なんだ… 初めてっうのは…ちょっと… 引かれたら…嫌だしよ…」

銀時の顔が痙攣する。


「ひ… 引かれるって… いいじゃん!好きな相手にしたらよ…初めてなんて嬉しいだろぉお!ほら、お姉さんが教えてあげるわ… みたいなさぁ」

「いや!!男としてのプライドがある。」


はっい―――――――――!


ちょっιプライドってプライドって…

「土方くん・・・寝るって… どうゆう意味???」

「そのまんまだ。抱かせろ。」

抱かせろって… 銀さんが下なわけ…何で―――ぇえ!


銀時は頭を両手で抱え、ガシガシと銀髪を掻く。


「万事屋ぁ。テメェは経験があるのか?」

「…へっ… 経験と言いますと… 」

「野郎とだ… 」

「はぁあ!!んなのあるわけねっだろぉぉおおがぁああ!」

「好きになったことは…?」

「す… 好きになったこと… ? あっ…」

銀時は考える。


「あんのか?万事屋?」

「好きになったっうか、憧れっうか」

銀時の視線は星空へ

「ずっと一緒だと、思ってた。護りたいとまでも… 思った。」

銀時の紅い瞳が潤む。その瞳に月明かりが映り綺麗。


「護れると思ったのに… その人は…」

銀時の声は震え、手で瞼を押さえる。


「死んだのか…」

土方は静かに問う。

銀時は首を左右に振り


「… 殺された…」

か細く夜風にかき消されそうな声。


「万事屋… 」

「あ――!止めだ止め。湿っぽくなっちまった」

グイッと酒を飲み干すが、その手は震えてる。






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