短編

□お互いの気持ち
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久しぶりの依頼の仕事を終え

銀時は 万事屋に帰る途中。

「あんの糞ババァ!こき使いやがって」
ぶつくさ文句を言いながら、早足で家路を急ぐ


空は今にも、泣き出しそうな雲行き


「早く帰んねーと こりゃ 濡れちまう!」

走りだそうとした

ふと、目線の先に 見慣れた人物 でも何時もとは 雰囲気が違う

黒の着流し (今日は非番か) 銀時は、思った

ちょっと、何時ものように、からかってやろうと思い

一歩前へ 踏み出したが… そこから足が進むことが、出来なかった…

黒い着流しの腕に絡み付く、細い腕…

(多串君)言い掛けて途中で言葉を、飲みこんだ

だって アイツは…今までに、見たことのない…嬉しそうな面してたから…

俺には、見せたことの無い…顔…

俺に向ける眼差しなんて、瞳孔開きっぱだしィ

喧嘩口調だしィ

俺に、笑いかけてくれたのって…

あったっけか…?



ねぇな…


別に、普通に喋り掛けりぁいいだけなのによ…

今、アイツの名前呼んだら、俺きっと 泣いちまう…


ェッエエ!!??

ちょ! ちょ!ちょっと待てー!

いやいやいや!

おかしくねぇ!?

ォィォィォィオーイ!

名前? 呼んだら なっ泣きそうってー!

はぁ! それじゃぁ、まるで 俺がアイツの事 好きみたいじゃねぇかぁぁあ!!


ォィォィォィオイ!
イヤイヤイヤイヤイヤーーーァ!!!!!

ぜってぇ ナイナイナイナイって 好きだなんて……………………!


イヤ 好き



だってよ 頬に伝う雨がよ こんなに熱くはねぇだろ…

いつの間にか降り出した雨

俺…… 泣いてる

きっと 何時も アイツに絡んでたのは
俺を 見て欲しく


女に 向けるあんな顔を、して欲しかったんだ


ぁーあ 思い伝える前に 失恋ですかぁコノヤローォ!


まぁ その方が 良かった

もし、気持ちなんて伝えたら… きっと
道で会っても、避けられる もう、話しなんて出来ない

ワザとらしく、蹴り入れたり 肩組んだり 奢れと後つけたり

うーん 普段でも俺ちょっと、変?


だけどよ 其れさえ 奪われたら

銀さん 立ち直るのに…………時間掛かるかも…

グスン


相合い傘で アイツの顔は見えねーけど

きっと さっきみたいな 顔してんだろうなぁ


グスン


グスン <ニャー>

グスン

<ニャー>


グニャー?

へっ?

路地裏… 段ボールに子猫

<ニャー>

雨に濡れて 震えてる

抱き寄せて

「どうしたんだ? 捨てられたのか? 可哀想になぁ こんなに… 震え… て…」


可哀想 自分自身に 言ったような言葉

子猫を 雨から護るように、抱きながら また、泣いた


自分に、降り注いでた 雨が急に 止み


「銀さん? こんな所で どうしたんですか?」

「へっ?」

振り向いた

狂死郎!

振り向いたはいいがヤバいよ! 俺ェッ 今、泣いてんじゃん

相手は 顔色を変えず

「捨て猫ですか?」

優しさが 宿る声で 言われた

流石は、一流ホスト触れてほしくねぇ、とこはちゃんと!理解してる

「ぁああ! そっそうなんだよね」

銀時は 頭を掻きながら

段ボールを指差し

「あん中によ 居たんだよね…コイツ」

銀時は、震える子猫を、懐に入れた

「あん中よりゃぁよ マシだろ」

そんな姿を、狂死郎は見て

「あなたは、お優しい方ですね」

狂死郎を見る 瞳はまだ紅く潤んでいた

「良かったら この傘を、お貸ししますよ」

「へっ?」

銀時の手をとり 傘を差し出した

「イヤイヤ! そんなことしたらよ お前が濡れんじゃん! 」

狂死郎は 銀時の言葉に思わず 吹き出した

「ェッ!ェッエエー!今、笑うとこ!」

「すみません 何だか当たり前すぎた、言葉だったもので」

「だってよ お前が濡れたらいい男が 更にいい男になんじゃん それに、銀さん女の子を敵に回したくないしぃ」

「貴方も 十分いい男ですよ」

「まぁ 言われなくても 銀さん十分いい男だってわかってるよん」

自分で 言ったものの顔が 赤らむ

「でもよ どーすっかなぁ! 家には大食い娘 ツコミ息子 デカ犬 いるしなぁ…」

「それなら お店に連れて行きましょうか?」




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