短編

□呼べよ
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お互い酒が入ってたかもしれない…大体!酒の弱いヤツが、飲み比べで!俺に勝てるわけねぇ!

俺はそんなに酔ってなどいなかった…


前から、触れてみたいと思ってた…確かに抱いた記憶はある…アイツの柔らかな髪と、白い肌をそして艶やかな声で、俺の名前を呼んだ…銀時……

なのに…アイツは…何事も無かったかの用に…振る舞う…

お前を抱いたのは、俺の都合のいい夢だったのか!?


夜の見廻りは、余り好きじゃねぇ…昼間より、いざこざが割に多いい

まぁ…怪しいヤツがいりゃ!その場でたたっ切るか…屯所にしょぴきゃぁいい
煙草に火を点けた…
「ありゃぁ!旦那じゃないですかぃ」

その言葉に蒸せた「…ゲッッ…ホッ…」

「土方さん!何してんです! そのまま、蒸せて土方死ねコノヤロー!」
「…そ‥ゲッ‥ホッッ‥」クソ!言葉が出ねー!
苦しそうな俺を、余所に銀色に、近付く

「旦那!? こんな所で何してんですかぃ?」

「あっれェ? 総一郎君じない! 何?仕事!」

「ヘイ!そうですがね 旦那は?こんな所彷徨いて、隅におけやせんねぇ!」


「いやいや! 銀さんもさ、色々あって忙しいんだわ! てかよ!ちゃんと、仕事しろよ!税金ドロボー!」


「いやぁ!あっしはちゃんと…してるんですがね…あのお人が「総悟ぉぉぉお!!」


銀色と眼が合った
白い手を挙げて


「多串君? 」


「はぁん!?誰だそれ!俺は土方だって、言ってんだろうがぁ!」(なぁ…違うだろ…あん時は…その唇で…)


「だって!多串君じゃん!」

ヘラヘラと笑いやがった!

「テメェー!ふざけてんじゃねぇぞ!クソ!総悟オラァ!行くぞ」(あの時のように…呼べよ…)


「銀さーん!」
息を切らせて、銀色の腕に絡み付く、可愛らしい生き物


「おっと…えっ?もうそんな時間だっけか?」
何だよ…嬉しそうな顔しやがって…

「今日は、ママがね たまには、早上がりしなさいって!銀さんに悪いからだって!」

「ヘェー あのババァも、気が利くじゃねぇか」


チラッと俺を見て、すぐ女に、視線を落とし

「んじゃ!行くか?」

「銀さん お腹空いた」

「わぁたよ!いつもん所でいいよな!」

「うん!銀さんとなら、何処だっていいよ」


何なんだ!オィィィィ!!はぁぁん!!!何処でもいいだとーーーーーー!


チッと小さく舌打ちをした「んっ!!」


「俺も、旦那とだったら、何処だっていいですぜぃ!」

仲良く人混みに、消えて行く三人……
「ゴラァァァァア!!!総悟ぉぉぉぉお!!テメェーはまだ、仕事中だろうがーーー!」




あれから総悟は明け方過ぎに帰って来やがった


聞きたい事は、山ほどあるのに、相手が総悟じゃ…無理だ…

銀色の顔が、浮かんで!無性に腹が立った!


女でも、抱けば気が晴れるかと思えば…余計に後味が…悪りぃ…


夜道を、煙草を噴かしながら歩く…ぼんやりと…前から…白い光…万事屋!?


「あれ?多串君?」


言い返す事をせず…通り過ぎる

「臭せぇ」

ハッとした!


ニヤリと笑い「女…臭せぇ」


顔が赤くなるのが、わかる!


「真撰組の副長さんも、女を抱くんだねぇ」


「はぁん!テメェーだって!この間の女と、よろしくやってんだろうがぁ!」

怒鳴った!クソッ!!自分に腹が立つ!


クスッと銀色が笑う

「何が!可笑しい!?」


「あれは、依頼!仕事でよ! 何かあの女の周りでちょっと…厄介な事が起きちまって…銀さん、腕ぷしだけはつええから! 頼まれたって訳よ」


「……………………」

「何?多串君ちょっと妬いたの?」

「ば‥馬鹿かテメェ!そんな事あるかぁ!!」

「銀さんさ、悪いけどよ!好みの、レベルたけぇんだよ!」


ヤツが通り過ぎる‥甘い香りが漂う‥耳元で「俺の‥タイプは…トシ…おめぇだ」


フラフラ歩くヤツの手を、引き寄せ抱き締めた


「ちょ!ちょっと!多串君!苦しいって!」

「………ん‥で……」
「はぁ?」


「…よん…で…くれよ…もっと…俺の…」「うん!? 多串君?「ちげぇ…「マヨラー?「ちげーーよ!テメェーー!ワザと言ってんだろうがぁ!」



白い腕が…おれの首元に絡みつき…艶やかな声で「トシ…十四郎…」

あの時と、同じ

確かに…その唇で…名前を呼ばれた…艶やかな声で…呼ばれた……たまんねー!もっと…呼べよ…その唇でその声で…俺の名前を…
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