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□嘘。
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迫り来る者を斬って、ただ斬って… ひたすら斬って、そして前に進んで…
いつしか廻りには誰も居なくなって…
俺は… 闇を見てた。ぼんやりとした視界に、何かが写り…
頬に冷たく当たって溶けていく… 。
雪… ?
掌に落ち行く白。
直ぐに消えて。
また、落ち行く白。
空を見上げ見れば吸い込まれそうな闇の中から、白く儚き物が降り注ぐ。
お前は知ってるのか?俺が犯した罪を。 その白さで隠してくれるのか…。
ふふ、知ってるさ…
お前の罪など…
誰?
沢山の灯火を消し… 闇をも切り裂くお前の罪… 知ってるよ…
誰だ?
ほらぁ… 見てごらん白夜叉ぁ…、 お前の両手を…
恐る恐る銀時は両手を出す。さっきまで白く儚き物が、この掌にあった… 確かにあったのに… 今は、
どーした?白夜叉ぁ…、何をそんなに脅えている… お前の犯した罪だ…
違う、違う違う違う違う!
知っていると言ったろ?お前が…
いやだ… そんな…そんな…
受け入れなければ… 穢れた白夜叉…
お前にこの白き儚き物は… 勿体無い…
お前の掌には… ふふ、これが似合いだ…
両掌に落ち行く白は…
赤く
紅く
朱く
赤黒く
俺の掌を染めていった。
穢れたお前には丁度いいだろ… 。
白夜叉ぁ…。
穢れた…
白夜叉ぁ…
あ、あ、うわあああああああああ…
暗闇… 俺は…、俺、は…
周りを見れば…
ああ、俺の部屋か…
震える掌を握り締め顔を覆った。
昔の夢をみるなんて別に、珍しいことじゃない。
拭いきれない物を俺は背負って、生涯生きて逝くのだと知ってる。
穢れた…
ほんとだなぁ、俺の総ては汚れてる。
土方、
声が聞きたい…
ふらりと立ち上がり電話に手を伸ばしダイヤルを回す。
今は何時だろう
あいつは寝ているのかもしれない、
でも、今どーしても伝えておきたい事があるから…
土方、
土方、
思いの外早く、土方は電話に出た。
「どーした…」
受話器をぎゅっと握り締める。
優しい声色に躯が奮える。
「… …」
「… 銀時…」
ああ、やっぱり俺はお前が好きだ。
だけど、いやだから… 俺は伝えておかなければならないんだ。
それが例え嘘だとしても…
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