A

□甘い。
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午前中の巡回が終わり、昼からは書類整理に追われるかと思うと… はァーと、でかい溜め息が出た。
煙草を吹かしながら廊下を歩き、自室へと歩む。


ん?

脚を止めた。隊士達数名が土方の部屋の前で、何かを囲むように居た。


滅多と土方の自室に近付かない隊士達を視て、土方は頸を傾げたが其所に何が有るのかが、気になり気配を消し歩み寄った。


太陽に照された銀髪は天使の輪を作り、キラキラと光を放ち唇は少し開き、そこから寝息が聞こえる。睫毛がたまにピクピクと動く。


暖かな陽気に誘われたのだろう、躯をちょっとだけ丸めて可愛い、銀猫が縁側で昼寝をしている。


「何視てンだァ、ゴラァ!」
「「「ヒィッ!」」」

土方の声に悲鳴を上げ散らばる隊士達。

たく、油断も隙もありゃしねぇ。まぁ、あいつ等の気持ちも分からなくもない。

銀猫が眠る傍らに腰を降ろした。風に揺れる銀髪に触れる。何度指先で真っ直ぐにしても、クルクルと戻る。


銀...

… ん、 ふにゃと笑い俺の掌に頬を摺り寄せてきた。


ふんがァ!ヤバいヤバいぃぃ!メタンコ可愛いじゃねーかァ!
もう一度

銀...


… んん、へへ

閉じていた朱瞳が少しだけ開いて

...と、し?


ちょこんと膝の上に頭を乗せて来たぁああああ!


ふごぉ!ヤバいヤバいヤバいヤバいぃぃ!このおたんこなすーぅ!


歓喜に震える躯の行き場を、拳を握り締め耐える。頭をモゾモゾくりくりしながら、良い位置をお探し中の銀猫。


真ん中はやめてぇ?!洒落になんなくなっからァ!

う、

はぁぅ、

くりくりやめて―ぇ!お願い!


くっ、ああんっ…

はぁ〜、


やっと好きな位置に収まったのか、ピクリとも動かなくなった。


風が頬に当たり日は注がれ、鳥の囀りが聞こえ。 ああ、いいなぁ… 呟いた。


銀猫がブルッと震えた。確かに暖かいが風はまだ冷たい。隊服を掛けてやれば、何時もは『煙草臭い』だの、『マヨ臭い』たの、『親爺臭い』だの…!ちょっとまて!臭いしか言われてないじん!


隊服に顔を埋めぎゅっと握り締め、ふにゃりと笑った。


ななななななにかなぁ!この可愛い生き物はぁぁぁ!


今すぐにあんあん、やんやん、言わせたろーかぁ!チキショー!

あ、ダメですね、きっと、メガドン級のパンチが飛んで来るだけだ…


煙草に火を点け肺に吸い込めば、苦い物の中に甘い匂いが混じる。




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