A
□てるてる坊主。
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ゲシッと背中を蹴られる。誰だ今蹴ったのわァ!チキショー!
「わかっ、分かったから、押すんじゃねぇ!行きゃいんだろっがァ!」
玄関を開けたら、強風と雨に煽られ人が…
「あう!銀さ…」
「あっ、マダオネ。凄いネ。空翔んでたネ!」
静かに戸を閉め電話。最後に唸るように、殺すぞ!一言加えた。
数秒して山崎がコレでもかとゆうくらいの、ティッシュを抱えやって来た。
心無しか顔が凹んで見えるのは、来る途中に看板らしき物が飛んできて、顔面直撃みたいな感じなんだろうが… 敢えて無視。
何事も無かった化のように、てるてる坊主作業を再開。
てるてる坊主、てる坊主ぅ、あーした天気にしておくれ♪チャイナが歌い出す。つられて眼鏡が… 歌い出す前に殴られた。
「でも、何でてるてる坊主なんだよ?」
「明日、ピクニック行くんだよ。」
「別に明日でなくても、いいだろ?」
「だって… お前、… 休み… が… 」
ゴニョゴニョと口ごもり俯く銀時の耳が真っ赤で…
つまり、俺の休みに合わせたって事ですかァ!すんません!俺も気合い入れて作りまーすぅ!
後で作業中の子供達の声がしなくなった。振り向き見ればてるてる坊主に、埋もれ寝息をたてている。
「静かだと思ったら、」
銀時は二人の頭を撫で、蒲団を掛けてやる。その瞳の色は深く優しくて… 胸の奥が温かくなって…
「俺等も寝ますか。」欠伸を掻いた銀時。
寝るぅ!大人の時間ですかァ!
ウキウキしながら蒲団へ潜り銀時を抱き締めようと、手を伸ばせばバッフンと何かを渡された。
二人の間に大きな!!てるてる坊主ぅぅ!!!
ジーッとボタンで付けられた目と瞳がかち合う。ちょっ、変な意味で怖ぇ!
「… 銀、と、き、」
うーん、枕にクリクリと頭を押し付け、寝床を確保中。猫だ!めっさ可愛い猫がいる!
「… 今日は、… 大人し、く、寝ろ… 」
てるてる坊主に抱き着きすーぅと息を吸い込み、いいなぁ、これお前の匂いがする。と、ヘラッと笑った。
ぬっおおおおおおおおおおおお!!!てるてる坊主を思いっきり抱き締めた。
明日、例え晴れなくても一緒に家で、ゴロゴロっつっうのもいい。
いい匂いが嗅覚を擽って、重い瞼が持ち上がる。瞳を擦り瞬きすれば、ジーッとボタンの目とまたかち合った。
だから… 怖ぇえってェ!
襖を開けいい匂いと音のする方へ行くと、台所に立ち料理をする銀時を見つけた。
背中から抱き着き、おはようと挨拶。
「顔洗って来い。飯にするから。」
「うーん、」
この温もりから手を離したくない。首筋をペロッと舐め、吸い付けばお玉で頭を殴られた。
「次いでに子供等も起こしてくれ。」
「… あぁ、… 銀時。」
「うん?」
テーブルに置かれている重箱と、銀時の顔を交互に見れば、
「銀さんの日頃の行いがよっぽどいいんだろねェ、ニッシシ、外視てみて。」
急いで窓を開けた。昨日の天候が嘘のように、空は青く澄みきっていて正に秋晴れ。
凄い!凄すぎんだろォ!万事屋パワー!てか、てるてる坊主の威力半端ねェ!
朝飯をみんなで食べ近くの川原に、弁当下げてピクニック。
別に遠出したわけでもない、金をふんだんに遣ったわけでもなく、ただ銀時のお手製弁当と、子供達の笑顔に傍らには、想い人がいてただそれだけなのに… 総てが輝いて見える。
「……?」
「ん?どーした、銀時?」
俺の顔を不思議そうに覗き込む銀時。
「んー、お前、今スゲー変な顔してた。」
「ぷっ、そりゃ」
銀時の肩を引き寄せ、
「幸福面っつっうんだよ… 」
唇を奪えば意味が分からないとばかりに眉間に皺を寄せた。
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