A

□てるてる坊主。
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『今夜から台風の影響で、明日も大荒れの天気になるでしょう。』


テレビの音声だけが耳に入り、障子を開け外を視た。木々が激しく擦れ合い唸り声を上げている。


「ビューン!ビューン!」
「ヒィッ!沖田隊長ォ!止めてくださーい!」


山崎が木に吊るされ激しく、風に揺れ木々とぶつかり合ってる。


「………………」敢えて無視。


今日中に仕上げる書類に手を掛ける。


この分じゃ停電も有り得るかもな。そんなことを考えていると、無意識に足が愛しい恋人の基へと歩む。


車を走らせ万事屋に着く。運転席には木々と格闘し、ボッコボコの山崎。コホン、敢えて無視。


万事屋の玄関に辿り着く数歩でさえずぶ濡れだ。カラカラと開ければ、賑やかな声が響き渡る。


「神楽ちゃん。それかわぅーいぃ!」
「マジでかァ!」
「銀さん、僕のは?」
「おぅ!イケテンじゃねェ?」


仲良し万事屋トリオは肩を並べ何やら制作中。


「オイ、何してんだ?」


「ねぇねぇ、銀ちゃんコレは?」
「おお!いい!」


やっぱりねぇ、センスあるぅ、天才!だとか言っている。


「って!オイィ!無視かァ!」


「「あ゛あ゛!!」」と、銀時とチャイナに凄まれ一歩下がる。

今更ですがコレでも俺、巷では鬼の副長って呼ばれてンですけどォ!攘夷志士からも恐れられてンですけどォ!


勇気を振り絞り下げた足を前に、「ンギャ!」銀時の奇声に躯が固まる。あー、俺って…


銀時がズカズカと近付いて来たと思ったら、ポーイと風呂に投げ入れられた。


ええええええええええ!!!


「お前、バカだろ。マジでバカですよね!こんなずぶ濡れで、人ん家上がるか?ふざけんなってンだよ!」

水コッチにも垂れてンじゃん、もう腹立つ、ブツブツ言いながら俺が付けた水跡を、拭いてる銀時。


すみません、ブクブクと湯船に顔を沈めた。


「で、何を作ってたんだ?」
「あー、コレ。可愛くねェ?」


銀時が手にしたのは、カラフルな布で作ったてるてる坊主。


「てるてる坊主?」
「へへッ、お前のもあるぞ。ほれ、」


手渡されたのはマヨネーズ柄に、身を包んだてるてる坊主。


うっ、やべェ!めちゃめちゃかわぅーいぃンですけども!


「銀ちゃーん、もう布ないネ。」
「そうか、ンじゃ、あっ、神楽ァ!貴重なケツ紙を使うんじゃねぇ!」


もう、いんじゃね?部屋一面に敷き詰められた、カラフルなてるてる坊主を視て苦笑い。


「大体、コレだけあれば大丈夫じゃないですか。片付けますよ。銀さん、神楽ちゃん。」


「何言ってンだよォ!こんなんじゃ勝てねーよォ!」
「そおアル。敵は恐ろしく強いネ。まだまだいるアル。」


敵?恐ろしく強い?
「どんな奴だよ。ソイツは?」
「「台風」」
「はぁぁぁぁぁ?!」


どーすんだ!どーするネ。団子頭と銀髪が頭を抱え悩む姿は、どーみても父娘にしか見えない。


「あ、そうアル。鼻紙はないアルか?」
「鼻紙?オイオイ、神楽ァ、家にそんな高級なモンはねーよォ。」
「高級?」
「そうそう、高級でお高い紙、ん?高級、高い?金?」


振り向き俺にニンマリと微笑み掛ける。何か…、やな予感がするンですけども…


「いやぁ、土方くーん。ツイにお前が役に立つ時が来た。」

ポンと肩を叩かれた。
はぁ?

「銀さん嬉しいわァ。初めてじゃねェ?生きてて良かったなァ。オイ!」
「オイィ!俺の人生否定すんなァ!」


さささ、どーぞ、行ってらっしゃいませ。と、背中を押される。


イヤイヤ、おかしいからかねェ!


「早く行けヨ!このろくでなしガァ!」
「ちょっと、ダッシュしたら直ぐ終わるからァ!」
「ちょっ、やめろォ!」
「銀さん、神楽ちゃん。待って下さい。」


おお!眼鏡ェ!


「傘ぐらいわね。はい、土方さん。」


って、オオオオオィィィ!





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