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□夏の匂い。
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「あれェ?旦那ぁ。来てたんですか?」
「あぁ…。」


はい、これと山崎が団子とお茶を銀時に置いていった。っつーかァ!俺にはァ?


「おや旦那。来てやしたか。」
「おう。」


縁側で煎餅を沖田と二人で、ムシャムシャ食ってる。っつーかァ、俺にはァ?


「あっ、万事屋の旦那。」


隊士達が集まり次々と、貢ぎ物が積まれる。それ総て銀時の胃袋へと消費されていく。


もっさもっさ、もっちもっちと、頬っぺた膨らまして食べる。美味しそうに食べる。幸せそうに糖分を口に運ぶ。最後には「みんな有り難う」と、トビッキリの笑顔を添える。


だーれーがァ、餌付けしろっつったよォ!バッキッと筆を折る。ただならぬ土方の、逆鱗オーラに気付いた隊士達は、銀時に頭を下げ散らばる。


ドッンと背中に重みが掛かる。


「銀時、重い。」
「うーん、まだ終わんないの?」
「あぁ、あと少し」

ふーんと銀時は言い土方の背中から離れる。


えっ?いや、離れなくてもいいんですよ?銀時さん!


銀時はまた縁側に座る。


「ひーじーかーたぁ!まだ終んねーのかよォ!お前の特技はマヨネーズ啜るだけかぁ!死ねよ。土方ぁ!」
「だーれのせいで書類増えたと思ってンだァ、ゴラァア!総悟ォ!お前が死ね!」


沖田は鼻で笑う。くっそォ!いつかいや、マジで殺る!!


外は蝉が忙しく鳴き、暑さをよりいっそう駆り立てる。少しの間だけ銀時の廻りは、静だったがまたチラホラと、馬鹿達が集まり出した。


「旦那。暑くないですか?」
「あちらの部屋でクーラー付けますけど。」
「喉渇きません?」
「旦那。」「旦那。」


あああああああああああああ!!!うっるせェ!蝉よりも忙しいわぁああ!


終いには、飲みをやりますがどうですか?まで、言いに来やがった!飲みって何?!っつーか仕事しろォ!


「んー、気が向いたら顔出すわ。」


オイオイ…、行く気かよ… 。


カタッと筆を置いたと同時に、銀時が背伸びをした。何時もなら大抵なら、俺の事なんてそっちのけで、隊士達と仲良くしてるのだが、今日は俺の仕事が終わるまで待っていてくれた。

ふわふわの銀髪に手を当て撫でながら、

「悪リィなぁ。待たせて。」
「うーん、終わったのか?よーし。」


銀時は立ち上がり大欠伸をし、土方に行きますかっと、ニカッと笑い言う。


着流しに着替え下駄を履き出掛ける。今日は、町内の夏祭りだ。夏恒例の行事に俺も駆り出された。最大の目的は…


「もう、新八、神楽行ってンだろうなァ。土方、銀さんがだまーって、ずーっと大人しく待っててやったんだから、いっぱい奢れよ!」


コレだ。財布だ。分かってますけどォ!ええそんなの、百も承知ですけどねェ!


行き交う道中は浴衣を着た人々ばかりで、下駄の音が心地良い。


神社近くでは既に夜店が軒を連ねていた。銀時はオォ!と、歓喜の声を上げ、夜店へとダッシュ。何を先に食べようかと、物色中。その姿がまたなんと、可愛いんだよォ!コンチキショ!


「鼻の下伸びてますぜぃ。土方さん。」

煙草に噎せた。振り返れば、祭りを満喫中の沖田がいた。ツッコミ満載だがやめた… 溜め息だけを煙と一緒に吐く。


「銀ちゃーん!」
「グッハ!」


土方は神楽に跳び蹴りされた。 だーからア!?何で俺ええ!!


「あらぁ、土方さん。こんばんは。」
「土方さん。こんばんは。」


志村姉弟に、あぁ、と、挨拶して目が点・・・


「… それ、何ですか?」
「あぁ、これ?さっき夜店にあったのよ。新作のヨーヨー?」
「ヨーヨーじゃねーよォ!それ、近藤さんだから、局長だからねェ!やめてェ!やめてあげてェ!白眼向いてっからァ!死ぬからァ!」





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