A

□忘れ物には注意。
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   ズッギッ、ドッガシャ――――ン!


すざましい音を立てて、万事屋の玄関から銀時が飛んでいった。


「痛ぅ!あだだだァ!ちょっ、骨折れたァ!次いでに俺の心も砕けたわァ!何しやがンだァ、コノくそガキィ!」
「はぁあん!お使いもロクに出来ない子に、育てた覚えは無いヨ!」
「えっ?おっかぁさん?!ってか、育てられた覚えねーよォ!」
「もう一回、いっといで。ちゃんと出来るまで、晩御飯も抜きだからネ!」


ピシャリと戸を閉められた。ホントにお母さん!

外は灼熱の太陽が真上で、神楽は家で冷蔵庫に頭を突っ込んで、俺に買い物を頼みやがった。


一応…、反論したが勝てず… イヤ、アレでも女の子だからねェ?優しい銀さんは手加減してやったんだよォ!

渋々、言われた物を買って来たのにだァ!たった一つ買い忘れたからって、この仕打ちィィ!


俺だって忘れたくて、忘れたんじゃねーっつーのォ!店に入った時は覚えてたんだよ。だけどよ、出るときはもう既に、忘れてたんだよォ!


よくあるよね?みんな絶対にあるよね!今日はカレーにしようとして、野菜と肉は買ったけど、肝心のルーを忘れて肉じゃがに、メニューが変更になったり、シチューにしようとしてまた肝心なルー忘れて、肉じゃがに変更したり!あるよね!絶対、みんな経験してるよねェ!


あぁ―――ぁ!またこの暑い中を行くのか… チキショー!絶対、忘れないぞってメモ紙書いて、出掛けてもその紙を家に忘れて行ったこと、あるよね!みんな絶対に経験したことあるよねェ!


忘れるのが人間のいいとこなんだよォ!仕方無いね、今度は忘れちゃ駄目よ。ってぐらいの心の広さはねーのか、家の子供は。


あー、暑い、暑い、溶ける溶けちまうよ… 銀さん。あー、アイス食べたい。熱い躯と頭を冷さないと、頼まれた物を忘れそうだ。


アイスを買い日陰のベンチで一休み。美味い。はぁ〜、幸せ。暑い日はアイスにかぎんなぁ。


ゆっくり味わいながら、アイスを堪能する。最後の一口を口に入れようと、ドン!背中を押されアイスが、ポトリと地面に… 地面に…

「!落ちたぁあ!!」
「あっと、悪リィ。」

銀時は顔をヒクヒクさせながら、振り返る。地面に落ちたアイスは、もう蟻さんの餌になってる。


「テンメェ!なんつー事してくれてんのォ!俺の最後の一口ィ!」
「悪かったよ。同じもん買ってやっから。」
「要らねぇよォ!俺はあの最後の一口が食べたかったのォ!俺のアイスゥゥ!」
「だから、同じもん買って「要らねぇ!俺のアイスはこのアイスなのォ!」


銀時は地面に落ち既に、溶け始めたアイスを指差す。


「チッ、面倒臭ぇなぁ。そんな甘ったるいモンは、どれも一緒だろっがァ!早く買いに行くぞ。俺はテメェと違って、暇じゃねーからなァ!」
「…ざ、… けん」
「あぁ!」
「ざけんじゃねぇ!どれも一緒?はぁ?だからテメェは… テメェは?テッ、メェ… は?って?お前、誰だっけ?」
「はぁああ?」


銀時は顎に手を当て考える。うーん、うーん、ポンと手を叩き、


「分かんねぇ。まっ、誰でもいいわ。」
「……………」
「暇じゃないんでしょ?いいですよ、暇人はほっといて。その服は?あぁ、警察の方?善良な市民から税金巻き上げて、好き勝手してる人達ィ?」


土方は口に加えた煙草のフィルターを、ギリギリと噛み砕く。そんな土方を銀時は冷めた瞳で見詰め返す。

「スイマセンねェ、面倒臭ぇ暇人はどーぞ、ほっといてお好きな所に行きやがれェ!このクソラー!」
「おまっ、!クソラーって何?ねぇ?マヨラーは分かるよ!分かる。クソッてねぇ、クソッてェ!何でマヨ省いたァ!…!ってオイィ!」


銀時は遥か彼方の方。猛ダッシュして捕まえた。ゼッ、ハァ、ゼッ、

「何?息が切れてますよ!もう死ぬんじゃないんですか?死ね。イヤマジシネ。」


鳩尾をおもっきし拳で抉られた。でも、掴んだ手は離さない。


「テッ、テメェ…、俺のこと、分かんねーんだよなァ?」
「あん?分かんねーっつーかァ、忘れたぁみたいなァ。」


掴んだ手に力が籠る。


「そうか、そうかァ、うんうん。」
「何だよォ…。俺、買物あんのォ!離しやがれェ!」


捕まれた手をブンブンするが離れない。あぁ、チキショー!


「だったら、思い出させてヤンよ!」
「はぁあ?!」

「俺の事をなァ。」
「ヒイッ!イヤイヤ、結構ですぅ!マジ、勘弁。」
「そんな嬉しがんなよ。」
「キモッ!コワッ!」


また、猛ダッシュで如何わしい所へ。あれよあれよとゆうまに、服は脱がされ滅茶苦茶に、気持ち善くされて意識を飛ばした。


のっそり蒲団から出ようとしたら、引き戻された。チュッとオデコにキスされて抱き締められる。俺も背中に手を回した。


「二度と忘れたとか、言うンじゃねぇぞ。」
「あぁ、」もう言うもんか、だって何されるか分かったもんじゃないから…。


「例え冗談でも、言うな…。」
「分かったって、言わねぇよ。忘れたなんて言わな、忘れた… 」
「どーした?」
「あぁあああ!忘れてたァ!神楽に頼まれたもん―――!」


暫く屯所に身を隠す銀時だった。






 

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