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□晩ごはん
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「神楽ちゃん、… 今日も来るみたいだね…。」
「イツモのことアル。アイツらバカアルからなぁ。」

僕は深く溜め息を吐き、目の前の馬鹿な大人二人を、曇った眼鏡越しから視ていた。


そう、あれは丁度2ヶ月前の出来事だった。銀さんと僕と神楽ちゃんで、大江戸スーパに買い物に行ったんだ。


「銀さん、もういい加減に、決めてくださいよ。」
「わーてるって、くっそ!何で俺が、晩飯作らなきゃなんねーんだよォ!おかしいだろ。」
「イヤ、アンタが当番だからですよ。」
「当番てなに?ねぇ、学校じゃあるめぇしよォ!自分の食いぶちぐらいは、テメェで何とかしろって!あー、もうォ!」


万事屋にはご飯を作るのに、当番制を用いている。そして今日は銀さんがその当番だ。だけど何にするか相当、悩んでいる。この人変なところで、拘るタイプなのだ。


「早くして下さいね。僕はちょっと、神楽ちゃん探してきますから。」きっと、またお菓子コーナで涎を垂らしているに、違いない。


「あぁ、んー、うーん… 」


聞いてないなこの人…


「こう、決めかねたときはだなぁ、新八ィ。新ちゃーん。ぱっつあん。眼鏡。ご飯にする、お風呂にする?それとも、あ・た・しィ。」


銀時は振り向き、相手の鼻先に指を当て、コテンと首をかしげてみた。


「ッ!テッ、テメェ!何してンだァ!」
「うおっ!!!何で多串がインダよォ!」

新八と思っていたら、土方の鼻を押していたのだ。グリグリ…、グリグリ…


「いい加減止めろォ…。鼻が上むいちまうわァ!」
「いいじゃん!更に男前になって、モテモテェ?みたいなァ、」
「なるかァ!コノクソ天パァ!」
「何だとォ!コノ腐れマヨラー!」


漸く神楽ちゃんを見つけ、銀さんの所へ… ってェ!


「ちょっとォ!お前らァ!何やってんだ!」

銀時と土方は取っ組み合いの喧嘩。周りには、野次馬まで出来ている。


「止めて下さい!二人とも!みんな見てますよ。」
「「あぁ!うっせぇ」」


駄目だこりゃ…


「銀さん、決まったんですか?メニューはぁ?」
「メニュー?何それ?ミンチでインじゃねェ?多串ミンチィ!」いい加減にしろよ。

「誰が、ミンチだァ!」
「だーからぁ!もうやめ、「お前らァ、今すぐ止めねぇと、全員蜂の巣にすっぞォ!」
「「「すみません」」」


銀時はブツブツ文句を言いながら、顎に手を当て食材を考えている。


「銀ちゃん私、鯖の味噌煮が食べたいネ!」


神楽は銀時の背中に登る。


「あぁ、鯖かァ、よーしィ。それとほうれん草の胡麻和えに… 」

銀時はカゴに食材を入れていく。
「………」
「………」
「………」
「………」
「あー、何ィ!何なんだよォ、さっきからテメェはァ!」


銀時が買い物をする後ろを、土方はずっと着いて来ていた。

「…………」
「何で着いてくんだって、聞いてンだよォ!」跳び蹴りをかましてやった。ザマーミロ!


「イヤ、それ全部お前が作んのかァ?」
「はぁああ!?」


蹴りを入れかなり遠くへ、飛ばしたはずの土方は、鼻血を滴ながら既に銀時の隣に居た!


「ゲッ!だったら、ドーだってンだァ!」
「ヘェ… 」何なんだよォ… マジ、コイツ…。


「作れんのかァ?」
「はぁっ?」
「だから、本当に自分で作んのかァ?」

銀さん怒っていいよね?っつうかー、殺ってもいいよねェ!

「作んのかァ?冗談!銀さんの料理の腕前は、世界、イヤ、宇宙一何ですぅ!お前が食ったら頬っぺた、落ちちゃうぐらいなんですぅ。」
「… マジか!」
「金出すっつっんならよォ!食わしてやってもいいぜェ?」
「マジですかァ!」


とっ、いった感じで土方さんは、食費を払いあれから晩ごはんを、食べに来る。

銀さんが食事当番で自分が来られない日は、僕と神楽ちゃんに頭を下げ、交代してもらい、銀さんの料理を食べに来る。健気とゆうか何とゆうか… 。


「あっ、ヤベ、」
「どーしました?銀さん。」
「ちょっと、作りすぎちまった。」


銀さんは最近、料理を作りすぎる。それは土方さんの分だ。

「大丈夫ですよ。僕と神楽ちゃんで食べますから。」
「すまねぇなァ… 」

銀さんはその事に気付いているのだろうか?





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