A
□夢。
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あー、気持ち良い…
温かくて…、心地好くて… 久しぶりだなァ…。こんなにも穏やかな気持ちは… 本当に…
あれェ?ココは何処だ?
銀時は周りを見渡せば、一面に広がる緑の芝生。時折、風が通り抜け草木を揺らす。それがまた心を落ち着かせた。
草花の香りが鼻を擽る。気持ち良い… 銀時は上半身を起こし
あぁ、山の上?に居んのかァ…。俺何時の間に登ったんだァ?キョロキョロ辺りを視るが、銀時独り。
まぁ、いっか、スンゲー気持ち良いしィ。立ち上がり背伸びをし、深く深呼吸。
チラッと下を覗けば谷間から、風が吹き荒れ飛ばされそうになる。
オイオイ…、怖ェェよォ…。墜ちたら終わりだなァ…。後ずさるが、ドンと何故か背中を押された…
ちょっ、えっ、マジ、で、
更に強く押される!銀時の身体、半分以上が谷間に、コンニチワしている。
吹き抜ける風、
底が見えない闇、
大きな口を開け、
飲み込まれそうだ。
イヤイヤァァ!!!!止めてェェ!押さないで!幾ら超人並の銀さんでも、無理だからァ!堕ちたら死んじゃうからァ!
ドンドン追い詰められ 、爪先で立ち後数センチで、この世とオサラバみたいになって…
抵抗したいのに身体が、思うように動かなくて、チキショー!最期にイチゴ牛乳飲みたかったなァ…。なんて!
生憎、俺は往生際が悪リィんでね!押している奴も、道連れにしてやるわ!
身体を反転させ後ろに居る奴に、手を伸ばそうとして、固まった… えっ、おまっ、其処には口端を上げ微笑む土方が居た。
嘘、だ、ろ、あっ、はっ、飲み込まれる…
身体が重力に負け落下していく… 土方はそんな俺を…愉しそうに… 視てる。
土方、お前は、殺したいほどに、俺の事が… 嫌いだったんだなァ…。
パチッと目が覚めた。見上げればいつもの天井。あぁ…、夢、だっ、たんだ… 。
夢で良かった。ゆっくり、静かに呼吸を繰り返す。落ち着け、嫌な汗かいちまった… 。浮かぶアイツの顔。俺が堕ちるのを、愉しそうに視ていた、アイツの顔が脳裏に焼き付く。
元々、仲が良い方では無い。それは認めよう。だが、アイツの不器用で優しい生き方や、たまに魅せる柔らかな笑みとか… 俺は、嫌いじゃ無い…
でも、アイツは違う。逢えばすぐ喧嘩になるし、もとから俺の事なんて眼中にないんだろうけど、なぁ、
風呂でも入って嫌なことは、綺麗サッパリ洗い流そう!うんうん、それが良い!
アイツが俺を嫌いなのは… 、今に始まった事じゃない… 、だから、大丈夫。俺は、平気だ。
少し懐がアッタカクなり夜は、飲みに出た。久しぶり暖簾を潜れば、威勢の良い親爺の声。
「よー、銀さん久しぶりだねぇ?」
「あぁ。何と無く飲みたくてね。」
店は結構、客が入ってて、席はカウンターの角のみ。一人だから良いかと座り、酒を飲み始める。
周りは日頃の愚痴やら、女の話しや、バカ笑いに、泣いてるヤツも居て、兎に角、賑やかだった。
口に酒を運び流し込んでいく。また、戸が開く、いらっしゃい、おや、今日は珍しい人が来るもんだ。親爺はニタニタ笑い、壊れ掛けの椅子を俺の隣に置いた。
人一人が何とか座れる場所。オイオイ、ここまでして、儲けたいのか?銀時は思い席を立ち、勘定と言い掛けたが、肩に手を置かれ腰がまた、椅子に戻された。
「万事屋ァ。帰るのか?」
土方はギチギチの席に座り銀時を見た。その眼差しは、夢で見た冷酷さは無かった。
「…あっ、いや」
「だったら、まだイケンだろ。ちょっと、付き合えよ。」
珍しい大抵は、何でテメェがいんだァ!的なことになるのに。土方は黙ってただ、酒を口にする。
そんな土方を横目でチラリ、盗み見る。あっ、スンゲー、目の下に隈が出来てる。忙しいのだろう。なら、酒何て飲んでないで、寝りゃいーじん!寝ろ!そして永久に目覚めるなァ!
「… 聞こえてンぞ!」
「!」マジで!
「マジだ!」
「あー、だったら、男ばっかでむさ苦し〜ィ処へ、帰って寝ろ!」
「… ね… …ンだよォ…」
「あぁ、何だって?」
耳を土方に近付ける。熱い吐息が微かに掛かり、ピクリッと小さく肩が揺れた。万事屋ァ…。耳許で熱を含んだ低音が囁いた。
「… 夢見心地が…、悪くて、なァ…。ぐっすり寝れねーんだ…」
最後には溜め息を吐いた。瞳だけを動かし視れば、漆黒の瞳が俺を映してた。不覚にもドキッとて、
視線を反らしたいのに、反らせない。視てはイケナイ… 、その瞳を視ては駄目だ。
「だったらよ、花街にでも行け。柔らかい胸の中だったら、ぐっすりと眠れんじゃねぇ?」
「… あぁ、そうかもなァ…。」
歯切れが悪リィなァ!
「ンじゃ、行けばいいんじねェ?まぁ、テメェなら営業時間外でも、すんなりだろうがなァ!」
噂はよく耳に入る。女達が競い合う程の美丈男。
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