MAIN(長編)

□D
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高杉に眠らされていた、隊士達は眼を覚ます

神楽もまた同じ

薄らと瞳が開き

心配そうに自分を、覗き込む

沖田に優しく微笑んで見せた

「…よかった…」

沖田は神楽を強く抱き締める






今回の被害状況、及び攘夷志士過激派追跡

大広間では、近藤を始めとする真選組隊士が集まり、話し合っていた

幸い爆破は、音だけが激しかっただけで
城とターミナルの建物自体には、余り影響がなかった

怪我人も少人数

軽傷者ばかりだった
だが、厄介なのは鬼兵隊の高杉

アイツは、一番…大切な者を連れて行った


「近藤さん」

襖が開き 沖田が新八と神楽を連れてきた

神楽が真っ先に口にした言葉は

「銀ちゃんは?」

この騒ぎだ…幾ら子供でも何かあったと察しって当然だった
皆は黙り…神楽の問い掛けに誰も答えない

神楽の顔が青ざめるのが、沖田には解った 震える肩を 抱き締める

「銀ちゃんの…ことだ…からきっと…も…う…笑って…家に…い…ヒッ…クッ…帰って来て…るネ…ゥッいつ…も…そう…ネ」
神楽は両手で顔を覆う 小さな躯は今の 状況を受け止められないでいる


新八もそう

「そ…そうですよ…ね…銀さん…は…」
握る拳はわなわなと震える

「帰らなきゃ…銀ちゃん…きっと一人で…泣いてるネ…」

肩を抱き締める 沖田の手を振り払おうとする

「チャイナ!落ち着きやがれ今、万事屋に帰って何かあったら旦那に顔向け出来ねー」

「離すネ!このサド!」

「総悟ぉ…離してやれ…」

襖が開き 土方が入ってきた

「トシ…」
土方は近藤に、向き直り

「近藤さん、さっきはすまねー」

頭を下げた

「土方さん あんたぁ二人を帰してもいいって事ですかぃ」

「あぁ 高杉の手の中に銀時がいる限り 今回みたいな、騒ぎは……」

土方は最後まで言葉を紡げなかった

何故なら、神楽が土方に跳び蹴りを、喰らわしたからだ

土方は畳に倒れ込む
一同は 息を飲む

普段ならば 決して有り得ない事…

仮にも 真選組鬼の副長が 跳び蹴り一つで 倒れ込む事などない

神楽は倒れ込む 土方に馬乗りになり

胸倉を掴み

「コノバカマヨラーぁぁああー!何で銀ちゃん護れなかったアルカ!銀ちゃんを…銀ちゃんを…返すネ!今すぐみんなの銀ちゃん!返すネェェエ!」


神楽は叫び、土方の躯を揺さぶる

土方は神楽を見つめ
抵抗はぜす ただ…
「…すまねぇ…」

と言葉を繰り返すばかり

「何で…ヨ…銀…ちゃ…ん…を…クウッ…」
土方の胸倉を強く 掴んだまま 神楽は泣いた

土方は神楽の背中を優しく撫でる




銀時… すまねぇ

お前の大切な者を…
俺は… 泣かせちまう…


お前は…今…

泣いてるのかぁ…


どうしたら… お前を… 銀時… お前を
護る事が…出来たんだ…



愛おしいお前を…

俺じゃぁ… 駄目なのかぁ…

なぁ… 銀時 …

教えてくれ… おれは

どうしたら… いい




新八と神楽は、万事屋に帰らせたが、護衛は付けさせた


玄関を開けるが 中は 真っ暗で 冷たい
神楽は、銀時の部屋を覗く

万年床に滑り込み

また泣いてしまう

銀時の甘い匂いに包まれる

「…銀ちゃん…」

新八は 銀時が何時も座る椅子に 腰掛け

声を殺して泣く

主の居ない部屋…

それは…とても…

広く感じる


でも、信じてる

子供達は、銀時が

帰って来ることを

何時もの様に ヘラヘラと そして

ふわっと笑い 二人の頭を撫でてくれる
温かく 大きな手を
失う事など

出来る訳がない

今は、銀時の名を呼ぶ事しか出来ない

無力な自分達にも

涙する


どうか…無事で…

僕等は…貴方の帰りを… 何時までも…
此処で待ってます



銀時は、一人… 暗闇に

膝を抱え…考える事は…同じ

大切な者達の事

きっと、ものっそい怒ってるよな フッ

今度、帰ったら俺!?袋叩きかも…

怖ぇえなぁ! 特に神楽何てきっと加減なしだよ

新八には、すげぇ ツ込み されそうだしよ

土方には…………次に逢うことなんて…
ない…なぁ

《逃げる様なら殺る》


耳の奥がキィーーーーンと痛い

胸は、張り裂けそう
しっかりしろ! 銀時
大丈夫…大丈夫

今までだってよ

何とか切り抜けて来た


でも…それは… みんが…

側に居たから… 俺は… 真っ直ぐ…立ってられた

銀時の頬がまた 濡れる

護ると決めた…

二度と逢えなくても
幸せだった思い出は
消えないから



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