MAIN(長編)

□C
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「…ッウ…」

傷口を押さえる


「まだ無理じゃき、急所が外れちゅうゆうても、傷は深いきに、そいにおんし死んだ事になっちゅう!」


「何!?」

「心配せんでもいいぜよ、わしがおんしの仲間には、連絡したきに、もうじき迎えがくるぜよ」


「俺は…高杉に…刺され…でも、何故!?辰馬? 貴様がここにいるのだ?」


坂本の顔は、曇る

「わしのとこにも、高杉が 来たんじゃ」

「貴様のとこにも?」

「じゃがな、高杉は何も言わずに…帰ってしもうた…わしは船におらんかったきに、陸奥がゆうちょた」


「何も…言わずにか?」


「で…気になってのぉ 来てみたら、おんしが倒れちょった」


桂はまた、考え込む

「おかしいと思わんかぁ? おんしの傷…ワザと急所を外しちゅう… 屯所の爆破も、高杉にしてみたら…小さすぎじゃぁ」


「辰馬! 何が言いたい!」


「ゆっくりと、攻め立て…欲しい者を手に入れる…為」


「銀…銀時を…」


「炙り出す為じゃぁ」

「炙り出す…為…」

「確かに、金時は強い! 護る者を前にすれば…しかし…それがヤツの、弱みにもなる…」


「高杉は、知ってる銀時の…弱い所を」

「ヅラ! あの戦で金時が去る時…高杉は黙って見送った…じゃが…自分の拳を血が出るまで握っちょったきに…わしは…何も言えんかった…」

その姿を 桂も知ってる

それから、皆それぞれの道を、歩み始めた


「金時は…知っておったんじゃろうか?高杉の気持ちを…」

「さぁな…知っていたとしても…銀時には、俺達は同士…痛みを分かち合った、仲間以外…何者でもない」


「高杉は、違うじゃろう! 諦めきれぬ感情が今、溢れ出しちゅう…それは、わしらでは、止められん…金時以外にはのぉ」


「ならば! 黙って銀時を、高杉に差し出すのかぁー!辰馬ぁ!」

桂は、坂本の胸倉を掴んだ

「ヅラぁ!落ち着くぜよ…違う!わしはそんな事を、ゆうてないきに…」


桂は、辰馬を睨み付け手を離した


「相変わらず、ヒドいのぉ…ヅラぁ!あはあはははは…ゲッフ」

アッパー 炸裂

「ふざけるのも、大概にしろぉーー!」


「ヅラぁでも、おんしならどうする」

辰馬は、急に真剣な表情になり


「わしらは、あの苦しい戦を、一緒に闘い抜いた同士…道は違えども…二人は大切な…仲間じゃきにヅラ…おんしならどうする!」


道は違えども…大切な仲間…


ならばどうする…
「フッ 辰馬ぁ…貴様も大概、馬鹿だな」

「いやそれ程でも、ないぜよ」


最初から、分かっていた気がする

皆が…バラバラになったあの日から


いつかは、こんな日がくるかも知れないと


だか、辰馬、 桂の二人の心は、決まっていた


大切な、仲間を護る為に、何をすべきか

二人は…知っている











銀時は、繋がれたまま まだ独房にいた

一度だけ 新八と神楽が来た

「銀さん」

「銀ちゃん…」

泣いているのが、わかった

「銀ちゃん…大丈夫アルカ…銀…ちゃ…ん…ウッ…クゥ…銀ちゃん…」

「神楽ちゃん…泣いちゃ…駄目…だよ」


銀時は、胸が痛んだ

「神楽ぁ!新八! 銀さん、大丈夫だからなぁ…だから、泣くな!」

「僕は…泣いてませんよ…泣いて…なんて…」

「新八ィ もし何かあったら、お前はちゃんと神楽を、護れいいなぁ」

「新八は、私より弱いアル。私は銀ちゃんがいればいいネ」


「悪りぃ…神楽ぁ!銀さん…ロリコンじぁないしぃ」

「それだったら、困りやすぜぃ!いくら旦那でも、俺ぁ 本気で、潰しまさぁ」
「いやぁ〜!沖田君 いたの?」

「このサド!何言ってるネ」

「チャイナ!眼鏡! もう行くぜ! 土方さんとの約束だ 旦那ぁ すいやせん また」

「離すネ!このサド!銀ちゃんー!また来るネ」

「銀さん…すみません」


重たい扉 三人の姿は見えず 声だけ

でも、嬉しかった

此処は僅かな、光しか射さず

暗い

自由にならない 躯

今、上で何が起こっているのかさえ、わからない…


銀時が此処にいる事など…高杉にバレるのは…時間の問題


その時に…俺は…どうする…


傷付けたくわない

誰も あの頃のように

誰も 傷付けたくなんかない






重たい扉が 開いた

ギーィ



銀時は、扉を開けた人物を見た

この世で一番…愛しい人


もっとも信頼し…

情けない自分も、我が儘な自分も、汚い自分も、全てをさらけ出せる

相手


「土方ぁ…」

愛しさを込めて 名前を呼んだ




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