つめこみ。

□うそつき
1ページ/1ページ


俺の部屋で雑誌を読む君とそんな君を見る俺。
静かにながれる時間と、薄暗くなってく空にイライラしてくる。


「しかん…」

「ぇ?」

「わん、凛ぬ事しかんばぁよ。」

「……」


だから、俺は気紛れにウソを吐いてみた。

こんなにも、君を好きなのに嫌いだとゆうウソを。


【うそつき】


「…裕次郎、」


震える声が愛おしい。
今にも泣き出しそうな顔が愛おしい。


「真剣?」

「真剣に決まっちょるやっさー。」


目をそらさずに言う俺と目をそらす君。


「っ……」


そして、君は走り出す。
俺から遠く、遠く、遠く……少しでも遠い所に、君を否定しない誰かの所に走り出す。


‐‐‐‐‐‐‐


「真剣っ、しかんって…」

「甲斐君が言ったんですか?」

「ん。」

「あんなに君を好きだと言ってストーカーにまでなりかけた彼がね。」

「ぅっ……しかんって、あび…った…真剣しかんって…」


涙がとまらない。
いつから俺はこんなに女々しくなったのだろう。
いつから俺はこんなにあいつを好きだったのだろう。


「ゆ、じろ…っかなさん、あびっ……〜」


いつから俺は、あいつに嫌われたんだろう。


「泣くか喋るかどっちかにしなさいよ。」

「ぅう〜……泣く。」

「…じょうとうとぅしして、鼻みじたらすもんじゃねーんやいびん。」

「えーしろーっ!!!」


‐‐‐‐‐‐‐


「んー、にふぇーでーびる。」


ペタペタとサンダルを鳴らしながら知念宅を後にする。
ここにいると思ったのに。


「あとや、永四郎ん家か。」


一番気が重いな。
絶対、怒られるだろし。

知念とか慧くんだと怒られねーけど、永四郎はすぐ怒るからな。


「………」

「………」


何て思いながら歩いてると目的地到着、コロネに遭遇。

俺は無ぼぅ…果敢にも戦うを選択した。


「き、奇遇ぐぁーやさ。」

「ちょっと話があります。」


やっべー、めちゃくちゃ怒ってんじゃん永四郎。
俺大丈夫かな?殺されたりはしないよな?
逃げるを選択すれば良かったのに、俺のバカ!


「君は平古場くんが好きなんでしょ?」

「…ん。」

「ならば、何故彼を嫌いと言ったりするんですか?」

「……凛、泣いてた?」

「それはもう、涙と鼻水と涎で顔をべとべとにして泣きじゃくってましたよ。」

「………」


淡々と…でも怒りを含ませた声色で俺を責める永四郎と、黒い闇で俺をのみこむ空。

どうしてか、泣きたくなった。
心が痛むってこんな感じなんかな?

でも、ひどくイラついたんだ。

俺のものになった君が、俺じゃない誰かと親しげにしてるのが。
俺を見ない君が、ひどく嫌いに見えたんだ。


「しちゅんならゆくしやてぃんしかんなんてあびるな。」

「っ…」

「彼が傷付くぬやみーんかい見えちょるやっさーろ。
だぁとも、やーやそんなくとぅもわからねーんくらいふらーなぬか?」


涙が溢れてくる。
怒られたからじゃない、痛いからだ。

俺の身勝手で凛を傷付けた。
俺の身勝手で永四郎を怒らせた。

俺の身勝手で俺が傷付いた。
まさに、自業自得。


「凛に、…謝りたい。」

「……俺の部屋で寝てますよ。」

「…にふぇーでーびる。」


そして、俺は走り出す。

君の近く、近く、近く……少しでも近くにいたいから。


きっと、君は泣きはらした目で寝てるだろう。
ずっと寄り添って、起きたら真っ先に言うんだ。




『わっさん。
いっぺーしちゅんばぁよ。』





.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ