つめこみ。
□人形
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行き場のない感情に涙を流してたあいつを、助けたいと思った。
【人形】
「ぐっ!」
殴られて、蹴られて。
痛くて仕方ないのに、俺には耐える事しか出来ない。
「………」
「かはっ…」
何も出来ない俺は、ただ黙って仁王を受け止めるだけの人形。
「…ブン太」
「っ……ど、した…にお?」
「ブン太」
「だいじょ…から、……なくなよ。」
痛む体をゆっくりおこしながら、壁にもたれて仁王の頬を撫でて涙を拭いてやる。
痛いのは俺なのに、いつも泣くのは仁王。
それでも……それが仁王の望む事なら、俺はただ黙って従うだけ。
「泣くなよ…ずっと、そばにいるから。」
不確かでくだらない言葉なのに、それを聞くと仁王はいつも安心して微かに笑みを浮かべる。
「…ん……」
お前が笑うなら、俺は何だってしてやる。
どんな嘘も吐くし、砂糖の固まりみたいな甘い言葉だって言う。
キスもセックスも求められれば何だって。
それが俺の幸せ。
だって俺は、仁王の人形。
捨てられるまで、持ち主に精一杯幸せを与えるのが俺の役目。