つめこみ。
□君に恋する5ヶ月前
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教室で友達の部活終わりを待つんが、私の放課後の過ごし方。
でも、今日は少し変わった事がおきたのです。
『やって、光くん好きて言うてくれたやろ!?』
『……』
『…本気や無かったん?』
何と言う非現実的な光景。
こんな会話をする人等がいて、こんな事を言われる人がほんまにおるなんてびっくりやわ。
「ちょっとだけ…」
後ろの席から前の扉は見えにくいような見えやすいような。
極力音を立てへんように少しだけ身を乗り出すと、女の子の方は見えへんかったけど男の子の方の顔が見えた。
『本気て何ですか?』
【パンッ!!】
ビンタの音がしたと同時に女の子は走って行き、その場所には男の子だけが残っている。
どうしよ。
叩かれて同然の奴を気にかけるんは嫌やけど、やっぱり気になる。
「……ぁ…」
出しかけた声と手が止まる。
もしかして、これて盗み聞きしてた事になるんちゃうん?
それは激しく嫌や!!
「盗み聞き?」
「っ!!?」
「それとも、見てました?」
「ぁ…ぃや、あの……たまたまです。」
私が考え込んでる間に教室に入って来てたらしい彼は、教卓に軽く腰かけてこっちを睨んできはる……ような気がする今日この頃。
「ごめんなさい!!」
「何が?」
わぁお、何て意地悪な子。
「その…盗み聞きと盗み見してた事です。」
「……」
「……」
ぇ、何この沈黙?
許されたんか、怒ってるんかわからんのですけど!?
「……」
あぁー、もう無理無理無理無理、嫌やぁぁあ!!!!!
何か…何か会話を!
「…き、君は……えっと………名前は?」
「財前ですけど。」
「ざいぜんくん……は、えーっと…本気で好きになった人おらんの?」
「おらんかったら何かあかんのですか?」
「いや、…別にあかんくはないですけど………スミマセンデシタ。」
ざいぜんくん性格ツンツンしてて、泣きそうや。
それに、何でこの話題選んだんか自分で自分がわからへん。
「…… …」
「ぇ?」
「…あんたは?」
「今何か…」
「偉そうに言ったんやから、いるんですよね?
本気で好きになった人。」
いや、今何か言うたよねざいぜんくん。
追求したいのにそれを許さへん威圧感に、引きつる笑顔と震える声でおもわず嘘を吐く。
「お、おるに決まってるやん!!」
「……」
「…何その疑いまくりの眼差し、止めてや。
おるよ、本当におるからね!」
絶対信じてへん目で私を見てくる彼から少し目を反らして、高笑いをかましたりしてみる。
「なら、その【本気】で好きになった時どうでした?」
「どうって……………………………………心の底からめっちゃ好きで、好きで好きでたまらんくて、つい目で追ったりなんかして、夜寝る前はその人を思い返して幸せを味わいながらまた明日を迎える…………みたいな感じ!」
「なっが。」
何やその返事。
聞いてきたから答えたのに、間の長さか説明の長さかわからんけど突っ込むなよ少年!
自分でも考えながら喋ってるから、文章のまとまりとか構成がなってないのはわかってんだから。
「本当はおらんのでしょ?」
「おりますー、おるに決まってるやろ!」
私のアホ、見栄っ張り、嘘吐き!!
これがアニメや漫画なら完璧に汗がだらだらなんやろうけど、あいにく人間な私はそんな事にはならへん。
気まずさに耐えきれず、窓に視線をそらしたら顔が予想以上に引きつってたんは気のせい。
「……なら…」
【ガタッ】と音がしてざいぜんくんが動いたのか思て前を見る。
「……」
あぁー、何やろコレ?
私の目に映ったのは、まるで子供の悪巧みが上手くいったみたいにニヤリと笑ってる少年。
「教えて下さいよ…本気の恋。」
ポケットに手を入れたまま私の目の前に来て、目線を合わせる様に少しだけしゃがむ。
「……」
それは、気付いた時にはもう遅くて。
「俺の事…本気で好きになってくれます?」
唇に柔らかい感触。
目の前にはドアップのざいぜんくん。
「俺に……あんたの事本気で好きにさせてくれます?」
流されたらあかんのに、流されてしまいそうになる。
そんな私を誰か止めて下さい。
【君に恋する5ヶ月前】
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