ー外伝ー【もう一人のトラブルシューター】

□第1撃【伝説の星】
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皆の知り合いにスターはいる?

昼のワイドショーなんかで、ありきたりなコメントを繰り返す芸能人じゃない。

CMでおしゃれなライフスタイルを売ってる、本業のわからない薄っぺらなタレントでもない。

ひとつの時代を自分色に染め上げて、火の粉を吐きながら空の半分を横切る星。

バカみたいに口を開けて見上げる地上の心に鮮やかな光の軌跡だけを残すシューティングスター!!

でたらめに高熱で
でたらめに眩しくて
燃え尽きるのも構わず明日もない勢いで自分を削り、光を放つ。

諺でもあるよね?

輝くためには燃えなきゃならない(BURNTOSHINE…あれ、これ、ことわざじゃなかったかな?)。

そのための燃料は誰だって自分のなかから調達しないだめなのだ。

他人からの借り物で輝く銀紙の星なんて、メディアずれした私みたいな都市生活者には、すぐにネタバレしちゃうからね。

ただ問題なのは、本物の星はあまりにも短命だってこと。

私が池袋の街で会ったのは、私が生まれる前に空を駆けたヒーローだった。

二十五年たってとうに灰になっていたかと思ったら、彼は池袋大橋のわきの空き地でいきなりあたりの水分をすべて蒸気に変えるような熱と光を放ったのだ。

しぶといよね、あの世代のオヤジって。

私がやつから学んだのは、男はいくつになっても無理してカッコをつけなきゃいけないってこと。

そうでなきゃ客には夢を売れないし、カモを騙すこともできない。

それに最後の最後まで切り札をとっておく勝負のやりかたもね。

もっとも私の場合、二億円近い高い授業料は私の知らないどこかの金融機関が払ってくれたのだけど。

新聞なんかを読むと、近頃のガキは善行でも悪行でも、あまりにストレートでふくみがなさすぎるよね。

微妙な味わいとか、ちょっと皮肉なツイストにかけるのだ。

同じヤバい橋をわたるなら、やつみたいなスタイルや意地の張りかたが、おおいに参考になると私は思う。

原始的な車上荒しやひったくりをいつまでもやってるようじゃ、悪ガキにだって未来がない。

やつは今も、二十五年前のヒットソングを歌いながら、この地上のどこかを旅していることだろう。

私は南のリゾートから手紙を一通もらったが、その後のゆくえは知らない。

知っていても人に教えることはないだろう。
いつかほんとうに燃え尽きるそのときまで、やつがうまく逃げ切れるといいなと思うだけだ。


だって、流れ星に鉄格子は似合わないもん♪


え?いったい何の話で?
悠じゃないのかって?

勿論、小鳥遊悠じゃなくて…私の名前は…
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