昭良

□狭い部室に窓一つ
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『先輩はよく、何か思い詰めるように外を見てますよね』
「あら、そうかしら…?」

そう言うと岩下先輩は自然と窓の外に目をやった

(また…)

心の中で思ったが口には出さなかった

『いつも何を見てるんですか?』
「…そうね、多分あれだと思うわ」

あれ、と指したものを見る為に窓際に寄った
するとそこには殺風景な校庭の中一際目立つものが目についた

『桜…』
「あれにはどうしても目を惹かれてしまうの、理由は色々あるのだけれど」

理由とは何か、なんて野暮な事は聞かない

『なんか…私も分かる気がします』
「本当?ふふ…嬉しいわ、あなたと共通の感性を持てて」

そう笑った先輩の顔があまりに綺麗で、思わず見とれてしまった

「あら…私の顔に何かついてるかしら?」
『あっいや!違います!』

ぶんぶんと両手を振ると、先輩はまた桜に目を移してしまった
なんだか…岩下先輩はまるで恋をしてるみたいに…

『先輩。一緒に桜見に行きませんか?』
「あの桜を?」
『あの、駄目ですか…?』

私の言葉を境に少しだけ沈黙が続いた

「…いいえ、ここから見ていても仕方ないもの。見に行きましょ」
『はい…!』

先輩と並んで部室を出る
私達はあの桜の元に

狭い部室に窓一つ

そこから見えるのは私のライバル





―――
20090428_2000打企画。有難う御座います

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