ソラ

□2000打
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「岩下先輩と仲いいよね」
いつも一緒にお昼を食べている子がぽつりと一言。
「・・・そう?」
「あれ、ちがった?いつも一緒にいない?」
言われて岩下先輩のことを思い出す、そういわれてみればそうかもしれない。
家が近いから登校も一緒で帰りも一緒だ。(・・そーいえば)
「趣味合うの?」
「え?」
「だから趣味、仲いいってことは共通点とかあるんでしょ?」
(・・岩下さんと私の共通点?)
言葉に詰った私に苦笑いしてその子はトイレに立った。


(私と岩下さんの関係って、)
私たちがお互いについて知っていることといったら名前と学年と基本的なプロフィールだけ、
彼女といつも登校するけども朝偶然会うだけで別に待ち合わせしているわけではない(帰りは岩下さんから誘ってくるけど)
いつも投稿時間に偶然会うから彼女の家も知らないし、
彼女が休日何してるかとか好きなものは何かとか好みのタイプはどうとかそういうことは一切知らない

(はたから聞いたら友達とは思えないようだけど、それで私たちは成り立っているのだ)
私が岩下さんについて知っていることは数個。
岩下さんは嘘をつかれるのが嫌いだということ。(うそついたら私を殺すらしい)
岩下さんには弟がいて、訳があって離れているけどとても仲がいいということ。(岩下さんが家族のことを話すのは後にも先にもこれだけなんだろうなと思う)
岩下さんは、
「どうしたの」
凛とした声に振り向くとドアの前に岩下さんの姿。
「岩下さん、」
「もう五時回ってるわよ」
「え、あ、もうこんな時間」
時計を見ると岩下さんの言うとおりもう五時を回っていた。(ずいぶん考えてたみたいで)
「どうかしたの?」
「や、ちょっと考え事を」言うと岩下さんは私を一瞥して「そう」と一言。「行くわよ」とふりかえる、
長い黒髪が揺れる。私は岩下さんの背中をゆっくり追いかけながら背中に話しかける。


「なんで、私と岩下さんは一緒にいるんだと思いますか」
ぴたり。岩下さんの足が止まる。岩下さんはいぶかしげな表情でふりかえる、

「・・私と一緒にいるのは嫌かしら」「や、そうじゃなくて・・」
「理由が必要なのかしら」
「そ・・そういうわけじゃ、」
「一緒にいるのが嫌じゃないなら、いいんじゃないかしら、それで。」

岩下さんは寂しそうに笑う。
「・・そうです、ね」
「あなたはどうしてだと思う?」
「え?」
「私とあなたが一緒にいる理由」
聞き返されて、私も答えを持ち合わせていない事に気付いた。
(答えというものがあるのかも分からないけど)

「・・多分、大した理由なんてないんだと思います。」
岩下さんの髪をかき上げる手が止まる。二つの瞳が私をはっきりと見る。

「私がいて、岩下さんがいる。それだけだと思います。」

絶対に出会わなかったら出会わないような私たちは何かの偶然で出会った。
それはただの「偶然」で、かっこよく言えば「運命」であって、
悪く言えば「神様か誰かのいたずら」であって。「惹かれあった」とかそういう次元の話ではない。

「・・・・そうね」
岩下さんは髪をかき上げる。ふわり、風が吹いた。
(多分私たちはこうやって毎日を生きていく)
お互いに干渉しすぎることもなく、常に三歩くらいの距離を置いたまま。

そんな関係のまま これからもずっと。

せかいでいちばんの他人様

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ようやく2000打企画に手を出しました(
4月終わるまでには書ききりたいと思ってます・・・

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