昭良
□にらめっこ
1ページ/1ページ
『先輩、その雑誌好きですね』
私の言葉に新堂先輩は返事もしないで机に置いた雑誌のページを捲る
『ボクシングの雑誌ですよね』
一緒に雑誌を覗き込むが先輩は何の反応もなし
頬杖ついて雑誌を見る姿は、煩い黙れと言わんばかりのオーラを出していた
『…そのページ昨日も読んでましたよ?』
「な…、うっうるせぇな良いんだよ!」
やっと口をきいてくれた先輩の顔は少し赤くなっていて、右手は急いでページを捲っていた
「もうお前は早く帰れ」
『先輩が帰るまでは帰りません』
私が言えば先輩はため息をついて窓の外を見た
空は紅くなり始めており、外からは運動部の声が聞こえてくる
「…腹減ったな」
『え?』
「腹が減った」
『はい』
「ーっだから明日は何か食うもん持ってこい…!」
少し早口で、焦ったような声だった
外を見たままの新堂先輩は、耳まで真っ赤にさせていた
にらめっこ
今日も明日も明後日も先輩は雑誌とにらめっこ
―――
20090811_毎日教室に遊びにくる後輩と素直になれないシャイ新堂