長編小説

□殺陣境遊戯(下)
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 せいぜい娯しませてやるよ。

 【殺陣境遊戯】後半戦、

 スタートだ。


★★★★★★★★


「土方さん。今回の件について何か…」
「うるせぇ!どけ!」

 どこから嗅ぎつけてきたのか、入口で待ち伏せしていたマスコミ陣をなんとか振り切って土方は病院に入る。
 起き出してきた入院患者に何事かと驚かれ、看護師に「病院内では走らないで下さい」と注意されたが、全部無視した。
 近藤が運ばれたという治療室まで来たところで――いた。
 顔の半分が赤く染まった沖田が。
 近くにある椅子には座らず廊下の真ん中に突っ立って、近藤が奥にいるであろう扉を無表情で見つめていた。
「説明してもらおうか」
 近寄ると沖田はチラリと目を向け、また戻した。
「…俺が近藤さんを見つけた時にはもう怪我してて、攘夷浪士に囲まれてました。なにしろ数が多くてね、俺も一発もらっちまったわけですよ」
「それで、何で近藤さんは病院を勝手に出たんだ?」
「知らないですよ」
「そうか」
 土方は沖田に詰め寄ると、問答無用で胸倉を捻り上げた。
 睨みつける。
「他に弁解はあるか?」
「…ありません」
「そうか」
 言うと、土方は拳を振り上げ、沖田を思い切りぶん殴った。
 怪我人だから手加減するという考えは皆無だ。
 沖田は呆気なく吹っ飛び、受け身さえとらずに壁に激突して倒れた。
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