悪夢

□外側と内側と奥側
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 面倒臭いので始めは黙っていた新八だったが、2人のヒートアップしてきた会話内容に思わず立ち上がって中断させた。
 息切れする新八に「まあまあ落ち着け。座って茶でも飲め」と勧める桂に少々苛立ったが、一理あるので大人しくその提案を受け入れた。
「しっかしアレだな〜。本当に暇だよな〜」
「そうだな。暇だ」
 さっきの喧嘩腰はどこにいったのか。
 とたん穏やかになった2人に働けよクソニート共がと心中で突っ込んだ新八だったが、先程のようになったら銀魂世界が崩壊しかねないのでここは空気を読む。
 暇だという言葉を聞き、桂が来るまで読んでいた冊子を手に取った。
「あ。じゃあ、心理テストでもしませんか?」
「心理テストぉ?昼休みの女子高生じゃねーんだぞ」
「昨今の女子高生はやらないと思いますけど」
「俺はわりと好きだぞ、心理テスト。よくエリザベスと一緒にやっている」
「気色悪いなオイ」
「ちょっと銀さん、言い方がストレートすぎますよ」
 若干引き気味の顔でもズバッと言い切る銀時に促す。
 また喧嘩になったら堪らないので「じゃあやりますか」と勝手に決めてページをめくった。その様子を、真っ正面にいる桂はまじまじと見つめている。
「新八君。珍しい本を持っているんだな」
「うお、マジだ。どこで売ってんだそんな本」
「え?これですか?」
 新八はちょっと掲げてみせる。
 それは真っ黒の表紙に赤茶色の文字で題名が書いてある、薄い冊子だった。
「これは今年の冬コミで売られていた同人誌なんで、一般では手に入りませんよ」
「……」
「……」
「おいコラ何だその蔑んだ目は」
 言っときますけどねぇ、と瞬きもせずにこちらを見つめる2人に顔を交互に向けて言った。「これは僕の友達の友達の友達の後輩の弟の物であって、決して僕のものではありませんよ」
「そこまで言うと逆に嘘っぽいよな」
「んだとコラ」
「新八君新八君、キャラが崩壊しているぞ」
 憤る新八にゆったりと突っ込みを入れ、桂は腕を組んだ。
「して、なぜそれが新八君の手に?」
「借りたんですよ」
「……(悲)」
「……(哀)」
「そんなにか!?そんなに駄目なのか!?」
 悪化した状況に新八はページをめくる手を止め、両手を振って叫んだ。
 いつもは感情の読み取りにくい銀時と桂だったが、今は露骨に奇怪なものを見るような顔で新八のことを凝視している。

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