悪夢

□函折り作業
2ページ/2ページ

「俺が死んだところで、世界は何も変わらないぜ?」
「壊れるだろう。新八君やリーダー達の世界が」
「かもな。だけど、それだけだ」
 持っていたジャンプをまるでゴミのように投げ捨てて、背もたれに目一杯寄りかかる。
 雰囲気は依然として同じだった。
「だから言ったろ?変化するのは周囲にある世界だけで『世界』自体は無傷なんだってば」
 俺が口を開く前に銀時は矢継ぎ早に言う。
「あいつがいくら享受しようがしなかろうが関係ねェ。坂田銀時も桂小太郎も高杉晋助も死なない限りは永遠に、吉田松陽を奪ったこの腐った世界で生きていくしかねーんだよ」
「…貴様にとっての『世界』は何だ?」
 俺の問いにゆっくりと口を動かした銀時の顔は。
 どこまでも遠望していてどこまでも失望していてどこまでも絶望していて、どこまでも希望していなかった。
「全く代わり映えがない、この世の全てだよ」

 だから攘夷活動をしないのだと、今更ながら思い知った。






End...
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ