悪夢

□面白お菓子く
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「そもそもクッキーとは」
 ケーキを焼く時にオーブンの火加減をみるため、少量の種を試し焼きしたのが始まりだという説がある。
 語源は、アメリカに渡ったオランダ人が自家製の菓子のことをクーク(小さなケーキ)と呼んだことからだ。
「だが、ビスケットの語源はラテン語のビスコクトゥス・パーニスからきている」
「へぇ。オランダじゃないんだな」
「ああ。ビスケットはイギリス軍隊や水夫達の保存食として生まれたものとだと言われている。日本ではポルトガル人によりビスコウトとしてもたらされ、幕末期には軍用保存食として注目され、明治13年にイギリスから製造機械類が輸入され一般に広まったのだ」
「ふーん。ところでよ」
「何だ?」
「結局何が言いたいんだお前は」
「うぃきぺでぃあは凄い、ということだ」
「聞き取りにくいからカタカナ使え。さっきまでベラベラ喋ってたじゃねーか」
「凄いなコレ。何でも出るぞコレ」
「あーハイハイ。んな事どーでもいいけど、粉砂糖は何グラムかわかったのか?」
「おっとすまん、脱線してたな。40グラムだ」

 2月14日、俺の隠れ家の台所にて。
 パソコンの液晶画面を見ながら言った俺に、せっせと準備に勤しんでいた銀時がのっそりと振り返って「ん?」と眉をしかめた。
「おい、ちょっと待て。分量多くねーか?」
 久しぶりに作るからあまりレシピを覚えてない、だからお前調べてくれ。
 と、作業に入る前に言ったわりには敏感に反応した。さすが糖類王というか、なんというか。
 台所の隅で、座椅子に座り膝上にノートパソコンを置いている俺は、チョコチップクッキーの作り方が表示されている画面から顔を上げた。
「多くはないぞ。7人分だろう?」
 俺は澄まし顔で反論してシンクを見る。
 先ほどまですっからかんだったシンクには、普段絶対並びそうにない材料と数種類の調理器具がズラリと揃っていた。これらは全て銀時が持参したものだ。
 新八君やリーダーが「バレンタインデーには銀時が作った菓子を食べたい」的なことを言ったらしく、断っても全く引き下がらなかったので仕方なく作ることにした。というのが銀時の言い分だったが、そう言った銀時の顔は心なしか嬉しそうだった。
 全くいくつになっても素直じゃない奴だと呆れながらも、材料道具一式を持って突然訪ねてきた銀時に台所を貸してやった。

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