その他小説

□願い星と境界線
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「Einigkeit und Recht und FreiheitFur das deutsche Vater land」

 プロイセンはいた。
 ブランデンブルグ門の上に座って悠々と国歌を歌っていた。
 下では国民がこれでもかというほど溢れ返っていて、今まで役目をなしてなかったこのブランデンブルグ門を行き来している。
 国民が一様に浮かべているのは笑顔、笑顔、笑顔――。最近までまったく見れなかった表情だ。プロイセンも自分の頬が緩まっているのを感じる。嬉しそうな国民の様子を見ていると、自然とこちらまで嬉しくなってくるというものだ。
 きっとあいつもそうだろう。
 いや、あいつは自分以上か。
「Danach lasst uns alle strebenBruder lich mit Herz und Hand」
 歌いながら崩れかけた壁の上によじ登り、肩を組んで国歌を熱唱している国民達を見て少し笑う。元気のいい奴らだ。
 本来ならプロイセンもこんな所にいないで、楽しそうな輪の中に混ざって一緒に騒ぎたいところなのだが――仕方ない。
 人様の国民に勝手に手出ししてはいけないだろう。
 故に、1人きりで歌う。
「Einigkait und Recht und Freiheit Sind des Gluckes UnterpfandBluh' im Glanze dieses Gluckes,Bluhe,deutsches」
 冷たくも緩やかな風が吹きつける。歌いながら宙に出た足をブラブラさせ、ふと真下を見る。
 地上とまでは結構な高さがあり、ただの人がここから飛び降りたら確実に潰れて死ぬだろうが、今の自分ならどうなるのだろうかと考えた。
 ドイツではなくなった、今の自分では。
 下を見つめ、いつの間にか無表情になっていた顔を自嘲気味に歪めた。思考を放棄する。
 考えたところで無意味なだけだ。
「……Vaterland」
 祖国ドイツ、と最後に呟くように言って歌い終わった。
 さて、と気持ちを切り替えるように腰を上げる。この場に来ているであろう弟を本格的に探そうと思ったのだ。
 とりあえず下に降りるかと移動し始めたところで、ヒュン、と何かが耳を掠めた。こちらにまっすぐに飛来してきた物を、確認するより先にプロイセンは後ろ手でキャッチした。
「……石?」
 石、というよりベルリンの壁の瓦礫のようだ。さらにいえばコンクリートの塊だ。避けたりしたら下に落ちて誰かが怪我する可能性があったから受け止めたのだが、なぜプロイセンに向かって投げられたのかというのは不明だ。
 まさかヴェストか、と思ったものの国民が怪我をするような事をドイツがするわけがない。
 じゃあ誰だ、と犯人を突き止めようと東ドイツの方を振り返った時、狙ったように瓦礫が飛んできたので今度は叩き落とした。
 だが。
 ドオォォン!!
「うおおおおお!?」
 直後、気付いた時には目の前まで迫っていた砲弾なんて、掴んだり叩き落としりできるわけがない。
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