悪夢

□函折り作業
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 みーんな同じ匣庭の中

 だから…



「狭義では、地球上に存在するすべての国家や住民社会の全体を指すらしいぜ」
「ちゃんと主語を言わんか。何の話しだ」
「このぐらい察しろよ。世界だよ、世界。英語で言うとworldだ」
「そのくらい知っている」
 昼を少しすぎた頃、万事屋。
 それはいきなりだった。
 いつものように攘夷勧誘しに来たらいつものようにばっさり断られ、何の脈絡もなく突然そんな話しになった。
 俺は来客用のソファーに座って自分で煎れた茶を飲みつつ、銀時は社長イスに行儀悪く座ってジャンプを読みながら会話は続く。
 ちなみに、いつもはいる従業員2人と1匹は買い物で出かけているらしい。
「お前は世界を変える、あいつは世界をブッ壊すって言ってるけどよォ。ここで言うお前らの『世界』って何だ?」
「世界は世界だ」
「はぐらかすなよ。ちゃんと言えって」
「答えのに難しい質問だな」
「っていうかお前らの言ってる世界ってのは、お前らの周囲のことだろ?」
「まあ、省略するとそうかもしれん」
「ということは、だ。変わるのは自分の周囲だけで壊れるのは自分の周囲だけなんだよ。所詮はな」
 銀時はぱらりとページをめくり、
 俺は茶を一口飲んだ。
「あの人が死んだことで俺達の周囲は確かに変わったり壊れたりしたが、世界的に見れば人間が1人消えたぐらいじゃなーんの支障もねぇ。『1人いなくなりました。』って記録されて呆気なく終わりだ」
「つまり、何が言いたいんだ貴様は」
「『周囲』は簡単に変わるが『世界』はカケラも変わらないってことだ」
「そうかもしれん。だが十人十色という言葉があるように、それぞれには別々の世界観があるだろう」
「なら、試しに俺でも殺してみっか?」
 そこで、銀時は始めて顔を上げた。
 こちらを向く銀時は無表情で無感動。この世のまどろみをごった煮したように澱んだ、真っ暗の瞳で俺を見つめている。

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