悪夢

□兵どもが夢の址
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 さぁ、祝宴だ。



「ぎん…と、き……?」
 俺が呼ぶと、銀時は「あ?」と言って振り返る。
 撤退の合図が出た戦場だった。帰ってこない銀時を探しに、1人でまた戦場に戻ってきた俺は目を疑った。
 疑うしかなかった。
「どうしたんだよ高杉。ボーっとして」
 いつもとなんら変わらない口調で喋る銀時。
「お前ッ…それ…」
 おのずと掠れる声、震える指先で銀時の口元を差す。
「何、喰ってんだよ」
「天人だけど?」
 べったりと真っ赤に染まった口周りで、あっさりと答えられた。
 銀時の近くには、喉を食いちぎられて仰向けに倒れた天人が1人。喋りながらもくっちゃくっちゃ口を動かす白い――否、赤い幼なじみ。
 今更ながらにして俺は全身の身の毛がよだった。
「…銀時。お前、何で喰ってんだよ」
「腹減ったら誰だって喰うだろ」
 当然のことを当然のような口調で、平然と話す。話すたび開く口内からは赤黒い塊がチラリと覗いた。
 確かに腹が減ったら物を食べるのは当たり前だが、俺が言って聞きたいのはそんな事じゃない。
 相手が銀時なのに何でこんな緊張してるんだと思いながら、知らずと溜まった固唾を飲み込んだ。
「だから、何で天人なんか喰ってんだよ?」
「はあ?何言ってんのお前。例えばよ高杉、目の前に握り飯があってたとして、それでもし自分が腹減ってたとしたら喰うだろ?」
「そりゃ…喰うけど、よ……」
「それと同じだって」
 はあ?はこっちの台詞だった。
 つまり銀時は握り飯を食べるような感覚、そんな普通の感覚で天人の生肉を喰ったっていう事なのか?今日の朝までは、少ない食料を皆で分け合いながら食べたというのに。

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