その他小説
□歪ノ英雄
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英国首都ロンドン、レンガ造りの背の高い建物と建物の間。
さらに、その奥。
悪人の吹き溜まりになっているような場所に、対峙している3人の男性と1人の女性がいた。
その中の1人である、銃を構えたアメリカの周りには数人の人間が鈍器とともに転がっていた。いずれも手心を加えたので死んではいない、気絶してるだけだ。
「…このっ!」
殴りかかってきた男の拳を逆につかんで、勢いはそのままに腹に膝蹴りをぶち込んだあと、がら空きの後頭部を銃のグリップで殴る。続いて飛びかかってきた男には最後の弾丸をお見舞いしてやった。
痛みに悶絶する男達を一瞥したあと、そもそもの原因である女性に目を向けた。虚勢をはっているようだが体が震えているのでバレバレだ。
はぁ。とこれみよがしなため息を吐いて、俺はジャケットに隠したホルスターに銃をしまった。
「…こういうゴッコ遊びみたいなのは、もう止めた方がいいと思うよ」
複数の男性に襲われている女性を助ける。という、ありきたりだがヒーローには放っておけない事にまんまと引っかかってしまった自分も自分だが。
女性は、俺を殴った棒を握ったままうなだれて何も喋らなくなった。
俺はそれ以上は何も言わずに黙ってその場をあとにした。
しばらく歩いて周りに誰もいないことを確認したあと、ズルズルと壁に背をつけて座り込んだ。
「女性なのにパワフルだな…完全にいっちゃってるよ」
ズボンをまくって怪我の程度を見ると、片足が妙な方向に曲がっていた。
折ってしまったものは仕方ないので、ズボンを戻して周りをキョロキョロ見渡す。ロンドンには何回も来た事があるが見覚えのない場所だった。
再びため息を吐く。自国は好景気だし骨折ぐらいならすぐ治るはず。これは、骨折が治るまで大人しくしていた方がよさそうだ。