シリーズ小説

□彼岸花ノクターン
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第序盤 夜想曲
【彼岸花ノクターン】

 咲きソロウでしょ。


★★★★★★★★


 1776年7月4日。
 天気は今にも雨が降り出しそうな、曇り。

「ぎゃ!」
 襲いかかってきた英兵に向かって手持ちのマスケットで発砲すると、短く悲鳴を上げて倒れた。
 俺は息をつくと、じっとりとした空気で額に伝ってきた汗を拭う。
 初めの方は優勢だった英軍だったが、時間がたつにつれどんどん劣勢になっていってた。今ではもう数えるほどしか残っていない。
 バァン!
 幾度となく響く発砲音。
 俺は音の方向へと顔を向ける。どうやら、また英兵が1人倒れたようだ。
「思ったより強いな、アメリカ軍。こりゃお兄さんの助けはいらなかったか?」
「いや、君がいなきゃここまでできなかったよ」
 いつの間にかフランスが側まで来ていた。
 いつもの優雅な姿とは違い、ボロボロであちこち出血している。という俺も似たような身なりをしているんだけど。
 今更のように、本当に戦争しているんだなぁとぼんやり思う。
 本当、今更だ。
「アメリカが勝つのも時間の問題なんじゃないか?」
「…勝負は、最後までわからないよ」
「慎重だな、いい事だ。――あーあ。あいつもさっさと降参した方が、被害は少ないのに」
 フランスが呆れたように言った『あいつ』は。
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