銀魂小説

□何の為に
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「ふんふ〜ん♪」

 満月がのぼる空の下、歌舞伎町の外れに坂田銀時はいた。
 時間はすでに深夜をまわっていたがそんなことは関係なく、上機嫌でCMソングを口ずさみながら悠々と歩いていく。
 珍しく仕事あり、今はその帰り道だった。仕事が終わるまでそれなりに時間がかかったがそのぶん収入は最高級。懐にはお札で分厚い封筒が入っている。歩きつつ時々懐を触っては「ウシシ」と笑う銀時は、はたから見れば不審人物に見えることこのうえない。だが今は夜遅く、ひっそりと静まり返った住宅街では外灯の明かりぐらいしか銀時を映すものはなかった。
 いつもなら一緒にいる新八と神楽がいないのは、仕事が深夜までかかりそうだから先に帰ってろと銀時自身が言ったからだった。普段いい加減そうに見えても、一応ながら保護者としての自覚はあるのだ。
 そして今は自分も万事屋に向かっているところ。まだまだ道のりはあるが、今のテンションだったら残り全部スキップでいけるくらいだった。もちろん、自分の歳を考えて自制したが。
 そんなわけでテンションが通常より数段高い銀時が曲がり角をまがったところで、とある公園にぶつかった。よく神楽と定春が遊んでいる公園ではなく、遊具の代わりにベンチとテーブルがあり、敷地面積のほとんどが木々でうめつくされている公園だ。
 ちなみに、以前長谷川がダンボールをしいて寝ていたのを目撃したことのある場所だったりする。
「あいつ、まだここで寝泊まりしてんのかな…」
 今は金もあるし、もしいたら居酒屋で何か奢ってやろうと気まぐれをおこした銀時は公園に踏み入った。
 昼間はカップルや家族で賑わっている公園も今は夜。点々と外灯がついているだけの園内は静まり返っていて、どこか寒々しい感じがする。
 銀時はマフラーをたくしあげ、口に手をあてて言った。
「おーい。長谷川さん、いるかー?」
 呼びかけるも、周りはしーんとしているばかりで反応はなし。そのまましばらく園内を回ってみたが長谷川と思われる人影はいなかった。
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