シリーズ小説
□第一弾「喧嘩」
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イギリスと喧嘩、というか殴り合いをした。
口喧嘩なら今まで何度もしたことがあったが殴り合うのは初めてで、イギリスの強さを改めて認識した。互いにほどよくボコボコになって一段落ついた今では、向かい合って2人して地べたに座り込んでいる。
途中でスコールが降り始めてきたりして、今じゃすっかりずぶ濡れだ。
服が肌にピッタリくっついて気持ち悪いが、疲労した体を起き上がらせる気はとんとおきなかった。目の前にいるイギリスもそうらしい、雨の降る空を仰いで、荒い呼吸を繰り返しているばかりだ。
雨。
怪我。
向かい合う2人。
何だか数百年前の光景に似ていて1人で苦笑した。
「あの日さぁ」
「ああ」
呼びかければ、応えたイギリスはいつもよりトーンが低い。
イギリスも同じ事を考えていたのか『あの日』と言っただけで伝わった。
「君、俺に『詰めが甘い』って言ったけど、君の方が甘いんじゃないかい?あの時撃てたのにさ」
「うるせぇバカ。お前なんか俺以上に、俺を撃つ時間はいくらだってあっただろ」
イギリスは曇天を見つめたまま「はぁー」と深くため息をはいた。
「…ったく。いつの間にか俺よりゴツくなって、横にもでかくなりやがって」
「ハハハ、それは悪口かい?」
「もう弟だとは思ってねーよ」
イギリスが上げていた顔を下ろしたため視線がばっちり合った。
互いに笑いかける。
「次は容赦なく撃つからな。イギリスなめんなよ」
「俺も次は遠慮なく撃つよ。俺は早撃ちが得意なんだからな、絶対負けないぞ」