蛇寮2

□lovers
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「っくしゅ」



最近冷えてきたなー、と思えばもう10月。
9月までの暑さが嘘のように朝夕の冷え込みは厳しく、厚手の衣類を何枚か羽織らなくてはいけないほどだった。



「誰かお前の噂でもしているんじゃないか?」



「…どうせ、嫌な噂だって言いたいんでしょ」



人に噂されるとくしゃみをすると言うが、実際はどうなんだろう。
確かめたことはないが、噂されるとしてもやっぱり内容は悪口なのだろう。…この隣にいる無駄にイケメンな彼と一緒にいる限り、悪い噂をされ続けるんだろうな。
ちらり、と隣の彼を見れば「何だ?」と聞かれる。「別に」と言えば何も言われなかった。
…端から見たら、これでもイチャついてるように見えるのかしら。
単純な疑問だが、そんなこと誰かに聞けるわけもなく(アブラクサスになら聞けるかもしれないが)、くだらないことを考えながら中庭を通り抜けたところで、不意に手を握られた。
顔を上げれば、こちらを見る不機嫌そうな顔。
「どうしたの?」と聞けば、「どんだけ冷たいんだ、お前の手は」と言われた。…そんなこと言われたって。



「外が寒いからね。元々手足冷えやすいし」



「冷えやすいならそれ相応の対策をするべきだろう」



「そんなこと言ったって、まだ10月だし」



言えば、小さく舌打ちしたあとに手を握られたまま私の手は彼のポケットの中へ。



「トム?」



「風邪ひかれてもめんどくさいからな」



なんだそれ、と思いながらも嬉しい自分。
あぁ、こういう姿は端から見たらイチャついてるように見えるな。
手を繋がれている上、それをポケットに入れられているため、身体は密着する。
今までにこんなにくっついたまま歩いたことなどなかったので、歩きづらいし恥ずかしいしで大変だった。



「顔が赤いぞ?熱か?」



くくく、と笑う彼。私はわざと「寒くて熱出たのかもね」と嘯いた。



「なら早く寝ないとな」



彼のマフラーを巻かれながら囁かれる。
そして寮に着くとなぜか私の部屋ではなく、リドルの部屋へと連行されるのであった。



















(…熱い)
(寒いと言ったり熱いと言ったりめんどくさいやつだな)

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