book4
□これが現実
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あれから週一のペースでスコール宅で映画鑑賞会をした。
お題を決めて、それぞれがDVDを持ち寄って一緒に鑑賞する。
たったそれだけだったが、面白くて楽しくて、毎回それが楽しみになるくらい私の生活になくてはならないものになっていた。
鑑賞会のあとには勿論食事。
交代で作る当番を決め、一緒に食事をするのが常だった。
一緒にいるのが当たり前で、一緒にいないのが不自然。
スコールの隣はそれくらい心地よい場所だった。
「次は何観ようか」
「お題は何がいい?『ホラー』?」
「いや!『ホラー』は無理!んー『SF』とかは?」
「あー…いいかもな。そうしよう」
ベタベタするわけでもなく、一定の距離を保ったまま。
お互いに付き合うとかそういうのは全くなく、ただ一緒にいて落ち着くことを理由につかず離れずをしている。
この距離がよかった。
否、これ以上は怖かった。
彼との関係が崩れてしまうのが怖かった。
彼を失ってしまったら、きっと私はどうしようもなくなる。
それが『友達』としてなのか、それとも『友達以上』としてなのかは私にも分からなかった。
とにかく、彼…スコールの存在は私にとってかけがえのないものであった。
「じゃあ私帰るね」
「途中まで送る」
「ありがとう」
既に暗くなった辺りを街灯が照らす。
暗所恐怖症ではないが、暗がりが苦手な私にとって、彼の存在は大きかった。
「足元暗いから気をつけろ」
「はーい。…っと、わ…っ!」
言ってる側から躓きかけ、おっとっと…とバランスを取れば、スコールに腕を掴まれた。
「言ってる側から…」
「…ごめん」
ドキンドキン…
鼓動が激しい。
それを隠すようにおちゃらけながらスコールに掴まれている手を外そうとする。
が、掴まれたまま、手は離されなかった。
「スコール…?」
「危なっかしいからな…」
そう言われ、繋がれた手。
ドキドキし過ぎて死んじゃいそうだった。
頭がおかしくなりそうなくらい緊張しているのが自分でも分かる。
「子ども扱いしないでよ」
「充分子どもだろ」
「スコールに言われたくない」
照れ隠しするように、そんなやりとり。
このくすぐったいようなやりとりができるのもスコールだけで。
「もうこの辺で」
「…あ、あぁ…そうだな」
「またね」
「あぁ」
絡めた指を外すと先程の温もりが恋しくなる。
――――…私…スコールのこと…
気づきそうで気づかないフリをする。
気づいてしまったら、この関係が崩れてしまう。
何よりもそれが恐い。
自分で自分を私は騙した。
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