novel(long)
□幾度目かの春
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「もうどこもかしこも満開だね」
買い物帰り、ふらっと寄り道すれば足元は花びらの絨毯で覆われる。見上げれば満開の桜。風が吹けば、まさに桜吹雪だった。
「そうだね、今年も満開だ」
ふんわり笑う彼につられて私も微笑む。そして手をとられると、そのまま手を繋がれた。
「たまには、いいでしょ?」
いつも連れ添って歩いていただけだから、手を繋ぐことに慣れてなくて少しだけドキドキした。
「一緒に迎える春ももう何年目だろうね」
言われてあっという間に過ぎた日を思い出す。付き合って、結婚して。もう私たちも結婚4年目だ。
「早いね」
「うん、あっという間だった」
「来年には家族増やしたいなぁ…」
「じゃあ僕頑張らなきゃね」
最初は女の子がいいな、私は双子がいい、など話ながら私たちは帰路をゆっくりと歩いていった。
(早速今日から頑張っちゃおうかな)
(…ちょ、こら!行動早くない?てかまだ夕方…っ!)