PandoraHearts

□光は奪われた
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 ぼくはなにをしたのでしょうか。ぼくがなにをしたというのでしょうか。ああ、だれか、だれか。聞いておくれよ、訊いておくれ。おまえはなにをしたのかと尋ねておくれよ。
 なぜぼくが拒絶されなければいけないのでしょうか。どうしてぼくはきらわれているのでしょうか。みんなはぼくに冷たくつめたく当たります。雨までもがぼくには冷たくつめたく当たります。ぼくだけじゃあない、ぼくをかばう兄さんにまでも、冷たくつめたく、当たります。
 けれどぼくは知っているのです。だけれどぼくは知っているのです。兄さんがほんとうはぼくをにくんでいるのだと。でもそのやさしさゆえに、ぼくを捨てきれなかったのだと。
 それにぼくはうしないました。あたたかなあたたかな光をうしないました。ぼくを認めてくれた、ゆるしてくれたひとを奪われました。
 どうしてですか。ねえ、どうして。神という、ひとがつくりしその願いの矛先よ。聞いているのならば聴かせておくれ。なぜぼくにこんな目を与えたのですか。どうしてひとはくだらない迷信まで受け入れようとするのですか。なぜぼくは否定されるのですか、どうして光を奪われなければならないのですか、なぜあいされないのですか、どうしてゆるされないのですか、ああ、神よ、神よ、いるわけのない神よ! ぼくはただ許しが、赦しが欲しいだけなんだ! けして許されない罪に対する罰の中に、少しの、ほんの少しの赦しが得られればそれで十分なんだ、なのに、なぜあなたは拒絶する? どうしてあなたは否定する? なぜ、罪を暴こうとする? またぼくが拒絶されるのを見たいというのか? またぼくが否定されるのを、見たいというのか?
 ならばぼくは抗おう、また拒絶されるくらいなら、また否定されるくらいなら、いくらでも抗ってやろうではないか! なにを利用してもいい、ああ兄さんだって例外ではない。わずかな許しもないのなら、かすかな赦しも与えてくれないのなら、ぼくは、ぼくはこの罪を隠し続けよう。それがさらなる罪を重ねることになろうとも、それが、どんな罰を受けることになろうとも。

光は奪われた
(ぼくはただ、)
(わるくないんだよ、)
(そう言ってほしかっただけなのに)

(そんな言葉をもらう資格さえ、もうありはしない)

BGM:梅雨色小唄

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