ケロロ軍曹

□ある幼き日
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「なあケロロ」

「んー?」

「おとなになったら、おまえ、なにになりたいんだ?」

「はあ? なんだよ、いきなり」

「いや、べつに…ちょっと、気になってな」

「あ、ぼくも、気になるなあ」

「えー…なにそれ、言うのっておれだけなわけ?」

「え?」

「おまえらが言うんだったら、おれも言ってやってもいいけどー?」

「………」

「………」

「だって、不公平じゃん?」

「うーん、それも、そうだよね…」

「…わかったよ! 言えばいいんだろ!」

「はい、じゃあゼロロからー!」

「ええっ! なんでぼくからなのー?」

「どうでもいいだろー、順番なんか!」

「おもいっきり指定してるけどな」

「ギロロうるさい! ゼロロ声かぼそいんだから聞こえないだろ!」

「…かぼそい、かなあ…」

「ああ、もう、いいからいいから! なにになりたいんだよ」

「うん、あの、あのね、ぼくは…お医者さんに、なりたいんだ」

「へー、医者かあ…」

「ちなみに、なんで医者なんだ?」

「…ぼく、みんなに助けられてばかりだから、せめておとなになってからは、ひとの役に立ちたいなって」

「いいじゃんいいじゃん! いい夢なんじゃね?」

「そ、そうかな…? あ、ギロロくんは、なにになりたいの?」

「お、おれか? おれは、その…車掌に…」

「えっ!」

「車掌ーっ?」

「な、なんだよ!」

「いや、だっておまえ、前に軍人って言ってたじゃん!」

「あれは父ちゃんも兄ちゃんもいたからだよ! それに、車掌に『なる』って言ってるんじゃあない」

「え、でも、なりたいんじゃあないの?」

「『なりたい』だけだよ。実際になれるわけがない」

「…おまえんちの父ちゃんと兄ちゃんのせいで?」

「それもあるけど、おれ自身が軍人じゃあないといけない気がするんだ」

「…むずかしいね」

「うん…でも、おれはそうじゃあないと生きていけないと思うから」

「…ギロロって顔のわりにいろんなこと考えてるんだな」

「顔のわりにってなんだよ! ていうか、もうおれもゼロロも言ったぞ! 約束だぞ、おまえも言えよ」

「隊長」

「…え?」

「いや、やっぱり提督!」

「ええーっ?」

「ちょっとおまえ、なに考えてるんだよ! 提督になんか、なれるわけないだろ!」

「だって、『なる』わけじゃあないんだろ? だったらさあ、夢は大きくしなきゃあな!」

「…大きくって…」

「………」

「提督になったら、宇宙の星を片っ端から全部侵略するんだぜ! そしたら、戦う相手もいなくなって、みんな仲良く暮らせるだろ?」

「…!」

「そうなったら戦争もない、死ぬやつもいない、爆弾も武器も兵士も軍もいらない」

「………」

「幼訓練所なんてないし、おれたちも遊べる。食って遊んで寝て、それだけしてたらいい世界になるんだ」

「…そんなに、簡単じゃあないだろ」

「そんなの、やってみないとわかんないじゃん!」

「………」

「…でも、なったらいいよね。そんな世界に」

「…そうだな」







ある幼き日
(結局、今でも叶えられていないけれど)
(願い続けては、いるんでありますよ?)

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